5月26日から三重県で開かれたG7伊勢志摩サミットが27日に終了し、オバマ米大統領の広島訪問も予定通り行われた。「イスラム国」などの国際テロ組織によるテロが警戒されるなかで開かれたサミットであったが、蓋を開けてみれば、テロどころか北海道洞爺湖サミット(2008年)に際して行われた反グローバリズム団体によるデモすら行われず、警備の面でいえばサミットは大成功だったといえるだろう。
首脳会談が行われた伊勢志摩だけでなく、東京、名古屋、大阪、広島などは街中が警察官だらけという厳戒態勢。駅のコインロッカーやゴミ箱は封鎖され、三重県内では29の学校が休校となり、会談会場である志摩観光ホテルを経営する近鉄グループがあべのハルカス近鉄本店(大阪市)を臨時休業するなど、警備は市民生活にまで影響を与えた。警察庁警備局関係者が語る。
「伊勢志摩サミットの警備では、手薄に見えないように“見える警備”に重点を置きました。それが、2万5000人を動員した“警察官だらけ”という状態です。テロリストがテロを起こそうとしても、そこら中に警備の目があることで、それを諦めさせることが目的です。
ただ、本当の警備は“目に見えない活動”が重要です。アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)、ICPO(国際刑事警察機構)からテロリストの顔写真、指紋などの生体情報を入手し、1年以上前から入管と連携してテロリストを入国させないという“水際対策”を実施してきました。そして、テロリストとは断言できないもののテロ組織との関係が疑われる者が入国すれば、公安警察官が24時間体制で行動確認するということを行ってきたのです。
首脳会談にあわせて制服警察官が目立ちましたが、実はその数以上の私服警察官が街頭に配置されていました。彼らは、過激派組織、国際テロ組織などの専門捜査員で、“面割り”を行っていたのです。捜査員はそうした関係者の顔を何百人分と覚えていますので、街頭に立って、そういう連中を探していたわけです。当然、自宅やアジトは24時間監視していますが、監視から漏れた人物を探し出すのが彼らの任務だったのです」
首脳会談開催前には、ターミナル駅の改札で一点を凝視したり、周囲に鋭い視線を配る男性グループが見かけられた。彼らは、同関係者のいう“面割り”を行う捜査員だったのかもしれない。