消費増税、東日本大震災並みの景気悪化要因…「延期で財政悪化」は嘘、逆に財政悪化も
内需を腰折れさせないために、消費税率10%への引き上げを2019年10月まで2年半延期することを安倍晋三首相が表明した。アベノミクスの失敗、年々増える社会保障費の財源をどうするのか等々、さまざまな意見が飛び交っているが、筆者は増税の延期は間違っていない選択だと考えている。
否、2014年4月の消費税率を5%から8%へ引き上げたこと自体が時期尚早だったと思われてならない。財務省あるいは一部の専門家は消費税を引き上げても「増税による消費低迷は一時的だ」、あるいは「増税による影響は軽微」と繰り返し説明していたが、個人消費の低迷が続いているのは明らかに消費税率の影響によるところが大きい。
図は総務省が毎月公表している「2人以上世帯の実質消費支出の増減率(対前年同月比)の推移」。やや見にくいが、消費税率が5%から8%に引き上げられて以降、2人以上世帯が1カ月に使うお金が前年同月比を上回ったのはたったの3カ月。家計は財布の紐を固く締めているのである。
もう少し図のデータを解説すると、14年3月は消費税率の引き上げを前に駆け込み需要が発生、対前年同月比で7.2%も消費が増えた。半面、消費税率引き上げ後の同年5月、消費は同8%ものマイナスに沈んだ。マイナス8%といわれてもピンとこないかもしれないが、データを遡ると11年3月に大幅なマイナス(8.2%)になっていることがわかる。東日本大震災があった月だが、当時はミネラルウォーター、缶詰など、備蓄できる食料品などはほとんど棚に並んでいなかった(主に東日本)。言い換えれば、買いたいけれどもモノがなかったのである。
当時と比較して、14年5月はどうだったかといえば、モノは店頭に並んでいたが皆が消費税率の引き上げにより財布の紐を締めた結果、家計消費は東日本大震災があった当時並みに縮んでしまったのである。15年3月にはマイナス10.6%まで同指数は悪化、同年5月はプラス4.8%まで回復したのは、それぞれ前年同月の反動といってもよいだろう。12年、13年は堅調とはいかないまでも、消費が持ち直す兆しがあったものの、消費税率の引き上げで消費の回復に水を差してしまったのである。
アベコベの政策
そもそも前回の消費税率の引き上げは、黒田バズーカと称される日本銀行が異次元緩和(金融緩和)のアクセルを踏んでいるところに、増税というブレーキを踏むというアベコベの政策を行ってしまったのが元凶と思われてならない。