「年収800万円」といえば、現在の日本では間違いなく高給取りで、「勝ち組」の部類に入る。国税庁によれば、年間の平均給与は415万円(2014年)なので、ざっとその2倍の収入になるわけだ。
ところが、年収800万円にもかかわらず、「家計が火の車」「破綻寸前」という家庭が少なくないという。『隠れ貧困 中流以上でも破綻する危ない家計』(朝日新聞出版)の著者で経済ジャーナリストの荻原博子氏に、そうした「隠れ貧困」の実態について聞いた。
高収入者に多い「隠れ貧困」の恐怖
荻原氏によると、「年収800万円もあり、普通よりいい暮らしをしているように見えても、『なぜか、まったく貯金がない』という家庭は、意外にもたくさんあるのです」という。
金融広報中央委員会の調べによると、貯金ゼロの人の割合は、年収750万円~1000万円未満で11.2%。年収1000万円~1200万円未満の場合は、さらに増えて13.5%に上る。
「たとえ貯金がゼロでも、膨大な住宅ローンをはじめ、学費や塾といった子供の教育費など、出費は増えることがあっても減ることはありません。そんな状態では、家族の誰かが突然病気になっても対処できない。そればかりか、お金を借りてしのいだとしても、返済するあてがないので、ますます経済的に困窮してしまうのです。私は、こういう人たちを『隠れ貧困』と呼んでいます」(荻原氏)
「00年代に入ってからは、ほぼ毎年のように、なんらかの税金や保険料の引き上げなどがあり、そのたびに家計は圧迫されてきました。その結果、年収800万円といっても、実際の手取りはどんどん少なくなっているのです。
そこで家計を見直すことができればいいのですが、なかにはそれができない人たちもいます。『隠れ貧困』に陥る人の多くは、収入が減っても家計を見直すことができない、つまり生活レベルを落とせなかった人たちです」(同)
なぜ、団塊ジュニア世代が一番危ない?
「隠れ貧困」の傾向が最も顕著なのは、現在40代となっている「団塊ジュニア」世代だ。荻原氏によれば、団塊ジュニアは「がんばれば、それだけの対価を得られる」という団塊世代の親の影響を強く受けているという。しかし、日本経済が低迷しているにもかかわらず、いまだに「がんばればなんとかなる」と考えていること自体が大間違いなのだ。
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