果物や野菜、皮ごと食べるのは人体に危険?そもそも実も農薬まみれで食べるのNG?
今回は、リンゴや梨やみかんなど果物の皮についてのお話です。“極論君”は「食べ物はすべて頂くのが理にかなっていると思うので、果物の皮は剥かずにそのまま食べる」という主張です。
一方で、“非常識君”は「皮には農薬が付いているから、皮を剥いて食べるか、しっかり洗ってから食べるか、または食べない」という意見です。
そこで、“常識君”、非常識君、“極論君”がネットサーフィンをしましたが、結論は出ませんでした。皮も食べたほうがいいという根拠としては、皮にはたくさんの体によい物質が含まれているからもったいないという主張が見て取れます。ビタミンをはじめ、抗酸化作用がある物質や、抗炎症作用がある物質、アンチエイジング効果のあるものなど、いろいろな物が含まれているという記載がたくさんみられます。
一方で、農薬が心配だという意見もたくさん見られます。果物を構成する物質のなかで、農薬以外を悪薬として論じるネット情報はほとんどありません。つまり、農薬の体への害がなければ、本人が好めば皮を食べれば良いし、本人が好まなければ皮を食べなければ良いことになります。
ネットサーフィンから結論を導き出すことの難しさを、3人は痛感しています。
基本的には皮を含めて安全は担保されている
農薬の危険性はどんなものなのでしょうか。基本的に農薬を使用しなければ、美味しいリンゴや梨やみかんはつくれません。人間が美味しいと思う果物は、虫も当然に美味しいと感じるのです。無農薬でそれらの果物を栽培することは、まず無理なのです。そうすると残留農薬が体に与える害の問題に集約されます。当然に、売る立場からは安全性を担保するために、農協などが体に害がないことを調べて流通させます。ですから、「皮を食べるな」という指示があるリンゴや梨やみかんなど見たことがないように、基本的には皮を含めて安全は担保されています。
しかし、心配性な人はそんな低濃度の残留農薬も気にしてしまいます。これはいろいろな場面で認められることで、野菜でも残留農薬の心配は実は存在します。また、牛乳なども牛の飼料に含まれている成分が当然に牛乳にも含まれると予想されますので、心配する人もいます。
そんな急性毒性ではまったく問題ない食材が、実は慢性毒性を有しているかは不明なのです。人工調味料や人工甘味料、そして人工のバター、つまりマーガリンなども心配と言う人もいます。アレルギー疾患は、50年前はほとんどありませんでしたが、花粉症もそうです。アトピーも増加しています。そんな疾患の増加と食生活を関連づける意見も散見されます。
つまり、いろいろなものを心配しすぎては生きてはいけません。
100%安全なものなどはない
では、どうすれば良いのでしょうか。できる範囲のことをするしかないですね。皮に付いている残留農薬が心配であれば、皮を剥いて食べればいいのです。また、しっかり洗って食べるという方法も選択肢になります。
皮に傷が付いていて、そこから内部に農薬が入ることを心配しているのなら、傷が付いた果物は控えればいいのです。さらに農薬は根から吸収されて果物の内部にまで浸透していると感じて、そんなことまで心配するのなら、果物を食べることを遠慮すればいいのです。そうすると野菜も同じ理屈になりますから、野菜も食べないことになります。
しかし、野菜も果物もまったく食べないと、栄養のアンバランスのほうが心配にもなります。そんなことをすべて気にしていては、ストレスでまた病気になりそうです。そうであれば、むしろ「100%安全なものなどはない」と腹を括って生活するほうが、心の平穏には良いのかもしれません。
常識君がコメントします。
「果物を生産している農家の人が、それらを食べているのなら心配はないでしょう。もしも、彼らが販売用と自分の食用を分けているのならちょっと心配になりますね」
確かに、生産している人こそ、美味しい食べ方や、安全な頂き方を知っていそうです。ネットサーフィンのいろいろな情報でウロウロするよりも、生産者に直接聞いてみるのは得策にも思えます。
今日は食の安全性の疑問から、ネットサーフィンから結論を導くことの難しさを痛感する会話となりました。
(文=新見正則/医学博士、医師)