安倍晋三首相が17日夕(日本時間18日午前)、ドナルド・トランプ次期米大統領とニューヨーク市内で会談したが、内容はともかく、その模様を垂涎(すいぜん)の思いで見ていたのが中国の最高指導者である習近平国家主席だろう。
なぜならば、トランプ氏が選挙期間中、激しく批判した国のなかに、日本のほか中国も入っているからだ。とくに中国に関して、トランプ氏は不平等貿易だとして、中国に「45%」もの「特別関税」をかけると言明しているほどだ。
仮にこれが現実になれば、今でもただでさえ減速局面の中国経済はさらに下降し、「年6.5%程度」という経済成長率の目標は達成できないことは間違いない。そうなれば、習氏は来年秋の第19回党大会を前に責任を問われ、権力基盤が大きく揺らぐ事態に陥ることも考えられるからだ。
できるならば、習氏も安倍首相と同様、すぐにでもニューヨークに飛んで行って、トランプ氏と会いたかったのではないか。だが、民主主義国の日本とは違って、中国は共産主義国であり、しかも歴史的にも建前にうるさい、メンツにこだわる国だ。習氏は最高指導者であり、かつての皇帝と同じだと考えてもよいだろう。
対するトランプ氏はまだ大統領就任前であり、大富豪だとはいえ一ビジネスマンだ。共産主義国のトップが資本主義国のビジネスマンに頭を下げて会いに行くことなど、できない相談だ。
例外中の例外でも、トランプ氏を中国に呼びつけて「会ってやる」というかたちならば、まだ会談実現の可能性はあるが、次期政権の最高指導部の人事構想で多忙なトランプ氏が、わざわざ自らが猛然と批判している中国を訪問することはあり得ない。また、中国政府高官が「民間人」のトランプ氏に会うことも、同じ理由でありえない。このため、中国側がトランプ氏と接触するのはトランプ氏の大統領就任後にずれ込むのは間違いない。
波乱含みの米中関係
だから、習氏は安倍首相がトランプ氏と「2人で本当にゆっくりと、じっくりと胸襟を開いて率直な話ができた。大変温かい雰囲気の中で会談を行うことができた」という言葉を聞いて、「やられた」と思ったに違いない。