昨年12月22日に厚生労働省が発表した2016年の人口動態統計の年間推計によれば、統計を取り始めた1899年以降初めて、出生数(1年間に生まれた日本人の赤ちゃんの数)が100万人を割り込むという。少子化に歯止めがかからない状況だ。
そんな少子化を背景に、空き家問題がこの2、3年でいっきに顕在化してきた。親が亡くなったり、介護施設に入所するなどして、空き家になってしまった実家をどうすべきか頭を悩ませる人はますます増えている。
では、空き家はどうすべきなのか。あるいは、将来空き家になりそうな物件についてどう考えるか。
(1)子どもの誰かが住む、(2)賃貸に出す(誰かに貸す)、(3)売却処分する、と具体的にはこの3つしかない。そのまま放っておくのは、固定資産税がかかるうえに維持管理費もかかるので、マイナスでしかない。しかし、「思い出があるから手放したくない」といった感情的な理由もあって、なかなか決断できない人が多いようだ。
不動産コンサルタントの長嶋修氏はこう語る。
「判断する上で重要なのが、その空き家が“どこにあるのか”ということ。不動産の価値は、一にもニにもロケーション。どんなに立派な建物でも、売買や賃貸のニーズがないところであればその価値はゼロ。建物が使えなくなって解体費が発生することを踏まえれば、むしろマイナスです。本格的な少子高齢化、そして人口減少社会の到来で、2040年の日本の住宅価格は2010年時に比べて46%下がるとのシミュレーションもあります。しかし、これはあくまで平均で、実際には『価値が落ちない・あるいは上がるもの』『緩やかに下がり続けるもの』『無価値・あるいは価値がマイナスになるもの』に大きく三極分化するでしょう」
使う予定がないなら原則売却
人口動態は不動産価格にもっとも大きな影響を与える要素の1つだ。空き家問題において、首都圏はこれまで全国の他の地域に比べてあまり深刻ではなかったが、モデルケースとして今後の人口動態をみてみる。
国土交通省の資料を基に作成した上表は、2035年の夜間人口と生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口層)の増減を、東京都市圏の鉄道沿線別に予測したものだ(2005年比)。沿線によって大きくばらつきがあることがわかる。