稀勢の里、優勝の要因は2日前の怪我か…全身にH.S.P.生成で運動能力ピークに
大相撲・春場所は終盤アクシデントとドラマが待っていた。12日目まで全勝できた横綱・稀勢の里が13日目に横綱・日馬富士の速攻で寄り倒されたとき、左肩~胸を強打し、しばらく起き上がれなかった。結局、救急車で病院に運ばれるほどの重傷であった。誰もが翌日より「休場」と思っていたが、14日目には左肩から胸にかけて、いくつものテーピングを施して出場した。出場するだけでも感動したが、当然のことながら横綱・鶴竜には為すすべもなく簡単に寄り切られた。左腕がほとんど使えないのは、テレビの画面からも十分に見てとれた。
そして千秋楽。13勝1敗の大関・照ノ富士と、12勝2敗の横綱・稀勢の里。照ノ富士が勝てば、優勝が決まる。稀勢の里が優勝するには、本割の一番と決定戦と二番続けて勝つ必要がある。稀勢の里の最大の武器である左腕がほとんど使えないのだから、勝負は端からついていたようなものだった。解説者の北の富士さんも「期待はしてません」と断言していた。
ところがどっこい。本割では右からの突き落としで、照ノ富士を転がした。そして、優勝決定戦。もろ差しになられ、絶体絶命のピンチで、右からの小手投げで辛勝した。
日本中の大相撲ファンが歓喜し、絶叫した。泣きだす人も大勢いた。これぞ、大和魂、日本男児の心意気である。
週間のテレビ視聴率「トップ10」のなかに「大相撲春場所(17:00~18:00)」が7回も出ていた。千秋楽の稀勢の里―照ノ富士戦があった3月26日が週間視聴率のトップで24.4%。瞬間最高視聴率は33.3%(18時)で、横綱貴乃花がやはり右膝の故障をおして武蔵丸を破り優勝したときに見せた「鬼の形相」が話題になった、平成13年夏場所千秋楽の32.3%も上回った。
このたびの優勝は、稀勢の里の横綱としての責任感、不屈の闘志がもたらした優勝であることには間違いない。
怪我の功名
しかし、医学的にみると「怪我の功名」も一役買ったのではないか、と推測される。
野球選手が手や足を怪我しているときに無理をして出場したところ、予想に反してホームランを打って大活躍、などということがよくある。試合後のインタビューで、「怪我をしたために、かえっていつもの力みがなくなり、いい結果が出ました」などと答えていることが多い。