動画配信サービス「DMM.com」がソニーの「PlayStation VR」に対応した──。そんなニュースが、ある業界に大きなインパクトを与えた。
PlayStation VR(以下、PSVR)は、2016年10月に発売されたPlayStation 4向けのバーチャルリアリティ(VR)システム。専用のVRヘッドセットを使い、さまざまなVRコンテンツを楽しむことができる。史上初の家庭用ゲーム機向けVRシステムとして大人気となり、発売すると即完売。これまで数度の再販があったが、いずれもすぐに売り切れている。
そんなPSVRに4月26日から対応しているのが、「PlayStation Store」で配信されているPS4向けアプリ「DMM.com」だ。今後はDMM.comが配信するVRコンテンツをPSVRで楽しむことができる。
DMM.comではコンサートやグラビア、ホラーなど1200以上のVRコンテンツを配信しているが、なかでも人気が高いのが成人男性向けコンテンツだ。動画配信事情に詳しいITジャーナリストはこう話す。
「DMMといえば、いわずと知れた有料動画配信の最大手。VR動画にも力を入れていますが、今回のPSVR対応は画期的です。これまで家庭用ゲーム機と成人男性向けコンテンツは水と油の関係だったわけですが、今回の動きでPSVRが成人男性向けコンテンツのプラットフォームになる可能性すら出てきたといえます」
DMMのPSVR対応について、SNSでは「そうそう、こういうのを望んでたのよ」「PS4最強だな」と、興奮気味のユーザーも続出している。
「ソフトオンデマンドが秋葉原にVR対応のビデオボックスを開店したときには、最大5時間待ちになるほどの大盛況。やはり、通常の作品とは没入感が違うので、そっち方面の業界ではVRコンテンツの人気は高いですね」(同)
近頃は、強制出演問題などもあり風当たりが強い業界。インターネット上では違法なかたちでコンテンツがアップされ、業界全体も低迷しているという。
「海外の動画サイトでは発売直後の作品がすぐにアップされることも珍しくない。かつてはレンタルしたり、買ったりしなくては楽しめなかった成人男性向けビデオも、いまやネット上で無料で視聴されてしまうわけです。しかし、VRコンテンツについては違法な動画サイトで楽しむことはできないので、業界としてはここがひとつの突破口になり得る。DMMのPSVR対応で、VR向けAVが大きく普及すれば、業界のV字回復もあり得るでしょうね。『AVにお金を払う時代が帰ってくる』と業界関係者も期待しています」(同)
男たちの欲望に応えるPSVRの争奪戦は、当分続きそうだ。
(文=竹村利生)