日本人にもっとも親しまれているお茶といえば、緑茶。「夏も近づく八十八夜~」とうたわれるように、春から夏は新茶の季節の到来です。新茶を飲むと1年間無病息災で過ごせるといわれていますが、新茶をふくめ緑茶を飲むことで将来に及ぶよいことがありそうです。
緑茶に含まれるカテキンは、体臭予防や口臭予防など臭いに作用する成分として有名です。また、疲労や老化の原因とされる活性酸素を無害化する抗酸化作用もあります。そして近年、認知症予防にも効果が期待できることがわかってきました。緑茶の製法が良い効果を生んでいます。
緑茶は茶葉を加熱して酸化酵素の働きを止めてつくる不発酵茶のため、紅茶、ウーロン茶、ほうじ茶に比べてカテキンが豊富に含まれています。
金沢大学大学院脳老化・神経病態学神経内科学の山田正仁教授らの調査で「緑茶を毎日飲む人は、緑茶をまったく飲まない人に比べて、認知症あるいは軽度の認知障害にかかるリスクが約7割も低い」ということが、わかりました。
また、米国ミズーリ大学の研究報告では、マウスの実験で緑茶の摂取と運動の相互作用がアルツハイマー病を予防したり、進行を抑えたりする効果があるということがわかっています。ほかにも、東北大学の研究でも、緑茶を飲む人に認知症が少ないという報告があります。
これらをはじめ多くの研究成果により緑茶に含まれるカテキンを摂取すれば、アルツハイマー病の予防、改善にも効果が期待できるのではと考えられています。
だからといって、明日から緑茶を水代わりに大量に飲むことはおすすめしません。緑茶にはカフェインも含まれていますので質の良い睡眠の妨げになる場合もあります。睡眠不足は脳にもよくありません。
では、緑茶を日常生活に効果的に取り入れるには、どうしたらよいでしょうか。
カテキンの性質をうまく利用しましょう。カテキンはポリフェノールの仲間です。ポリフェノールは水に溶けやすい性質のため、一度にたくさん摂取しても、体内に貯蔵されないで外に出てしまいます。また、効果も2~3時間しか続きません。
そのため、一度にたくさんの量を飲むのではなく、少量を何度かに分けて飲むことをお勧めします。これまで、仕事の休憩など日常生活の中で、緑茶を飲んでいた方は、カテキンの抗酸化作用、認知症予防の恩恵を受けていた可能性が高いです。これからも良い習慣を続けましょう。
そして、緑茶を飲まれなかった方は、今日から緑茶も食生活の中へ取り入れてみてください。
(文=森由香子/管理栄養士)