ドナルド・トランプ米大統領周辺がロシアと不透明な関係にあるという「疑惑」が、米メディアによって盛んに報じられている。1970年代にニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件になぞらえて、「ロシアゲート」とも呼ばれる。しかし、これらの報道は信頼性に乏しく、むしろ「疑惑」を主張する側に危険な意図があるとの見方が強まっている。
ロシアゲートの発端は、トランプ(共和党)、ヒラリー・クリントン(民主党)の両候補が争った米大統領選中の昨年夏、民主党全国委員会へのサイバー攻撃が発覚し、同委幹部らのメールが流出した事件。同12月9日、ワシントン・ポスト紙は米中央情報局(CIA)の秘密報告書を引用し、サイバー攻撃はロシア政府機関のハッカー集団によるもので、クリントン氏の当選を妨害し、トランプ氏の勝利を支援するものだったと報じた。
このほか、「トランプ陣営関係者がロシア政府による選挙干渉を支援」「ロシア側と対ロ制裁について秘密裏に協議」「ロシア絡みで不透明なカネの流れ」といった「疑惑」が相次ぎ浮上。今年5月に米連邦捜査局(FBI)のコミー長官を突如解任したトランプ氏の司法妨害疑惑も加わった。
米主流メディアはこれらの「疑惑」について繰り返し報道してきた。しかしワシントン・ポストによる最初の報道から半年以上が過ぎた今でも、「疑惑」を裏づける証拠は判明していない。
「米側の共謀、根拠乏しく」
米メディアの報道を受け売りしていた日本の報道機関も、さすがに冷静になり始めたようだ。日本経済新聞は7月7日、「米側の共謀、根拠乏しく」と題し、元米大統領法律顧問ピーター・ワリソン氏のインタビュー記事を掲載。同氏は「政府や議会の関係者がこぞって内部情報を漏らし、メディアもそれを十分に検証しないで一斉に報じている」などと厳しく指摘した。
米国内でも以前から、「疑惑」報道に対する批判はあった。ウィルス対策ソフト開発の先駆者であるジョン・マカフィー氏は今年3月、ロシアの通信社スプートニクの取材に答え、こう述べている。
「断言してもいいが、民主党全国委にサイバー攻撃を仕掛けたのはロシアではない。使われたソフトウェアが古すぎる。政府のハッカーなら、最新版より機能が劣る古いバージョンのソフトは使わない」