マカフィー氏はさらに、「サイバー攻撃の犯人を特定するのはほとんど不可能。優れたハッカーは自分の痕跡を隠し、誰か他人の仕業に見せかけることができる」とも指摘している。
かりにロシアによるサイバー攻撃が事実だったとしても、大統領選の行方を左右するほど大きな影響力があったとは思われない。それを何より如実に示すのは、トランプ大統領もしばしば指摘するように、当時のオバマ政権がサイバー攻撃を知りながら、なんの手も打たなかったという事実だ。
もしサイバー攻撃がそれほど重大なら、オバマ大統領は同じ民主党のクリントン氏を守るため、すぐさま対応したはずだ。ところが実際には何もしなかった。ニューヨーカー誌3月号の記事によれば、当時はクリントン氏が選挙戦で優位に立っていたため、オバマ大統領は積極的な反応を控えたという。もし強硬に対応すれば、勝てる選挙を無効にしてしまいかねないからだ。
米国の武力によるクーデターや体制転換
別のもっと重要な意味でも、ロシアのサイバー攻撃など大したことではないといえる。それは米国自身がこれまで世界中で行ってきた武力によるクーデターや体制転換などに比べれば、児戯に等しいということである。
冷戦終結後、米国はイラク、アフガニスタン、イエメン、シリア、南スーダン、ソマリア、ウクライナなどで軍事介入を繰り返してきた。これらの国はいずれも内戦状態に陥り、国民は死の恐怖と隣り合わせで暮らす。
ロシアを非難するクリントン氏自身、国務長官時代に北大西洋条約機構(NATO)軍によってリビアのカダフィ政権を崩壊させ、今に続く同国の混乱を招いた。選挙への介入程度であれば、さらに多数に上ることは想像に難くない。
こうした米国自身による暴力的な介入と比べると、かりにロシアによるサイバー攻撃があったとして、それを大げさに騒ぐことがばかばかしく見えてくる。
クリントン一家と金
似たような話はほかにもある。今年2月、マイケル・フリン大統領補佐官(当時)が昨年12月に民間人の立場でロシアの駐米大使と対ロ制裁をめぐって協議したことが違法だと指摘され、辞任。翌月、フリン氏が2015年にロシアの政府系メディア「RT」などから講演料として計約5万6000ドル以上の支払いを受けていたとして、民主党議員が問題にした。