北朝鮮の暴走が止まらない。
8月29日、北朝鮮はまたも弾道ミサイルを発射し、ミサイルは北海道上空を通過して太平洋上に落下した。北朝鮮は7月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を2度発射しており、国際連合の安全保障理事会は対北朝鮮制裁決議を採択したばかりだ。9月9日には建国記念日を控えており、この日に6回目の核実験を強行する可能性も示唆されている。
いったい、北朝鮮はどこに向おうとしているのか。6月に刊行された『金正恩の核ミサイル 暴発する北朝鮮に日本は必ず巻き込まれる』(扶桑社)の著者で評論家の宮崎正弘氏に話を聞いた。
中国軍の利権化している北朝鮮のミサイル開発
「北朝鮮の目的は、自分たちを『独立国家である』と認めさせることです。今までは、その時々によって中国やロシアの保護国のような立場でしたが、李朝時代のように主権国家としての独立を成し遂げて、一人前の国家あるいは列強として、国際社会で勝負したい。それが一番の望みでしょう。
そんな北朝鮮を、ロシアは『今まで保護してきてやったのに、何を偉そうに言うのか』と見ている。ただ、今の国際政治は中国とアメリカがメインプレイヤーとして動いていて、ロシアは置いてきぼりの状態です。そこで北朝鮮が騒ぎを起こすことで、ロシアは国際社会での存在感を示すことができる。そういう思惑もあって、ロシアは介入しているのです。北朝鮮も、それをわかっていてロシアをうまく利用しているといえるでしょう。
北朝鮮は中国に対してもずっと頭が上がらない状態でしたが、『核兵器を持つことによって一人前の発言ができる』ということを、金正日総書記の時代に知ってしまった。中国としては、散々面倒を見てあげて、『早く経済特区をつくれ』と指導したにもかかわらず結局何もしなかったため、頭にきている部分もある。
しかしながら、中国にとって北朝鮮は緩衝地帯ですからね。北朝鮮が消滅して、アメリカの同盟国である韓国と国境を接するなんていうことにはなってほしくない。
また、中国にとって北朝鮮は鉄砲玉としての利用価値があります。何か起きたときに、ヤクザの親分のように『あれは若い衆が勝手にやったことです』と言って、とぼけることもできるわけです。そんな状況のなかで、北朝鮮はますます核開発にいそしむのではないでしょうか」(宮崎氏)
「理論体系や基礎的な知識を与えたのは旧ソ連です。旧ソ連が崩壊してロシアが誕生し、冷戦が終わりましたが、ロシアの科学者は何人も北朝鮮に残っています。北朝鮮の女性と結婚して、北朝鮮に国籍を変えているロシア人が何人もいるのです。
ただ、具体的にミサイルの組み立てなどを行う際には、特殊合金などの素材が必要になります。そこでかかわってくるのが中国です。北朝鮮と接している遼寧省と吉林省を統括しているのは昔の瀋陽軍区、今の北部戦区です。中国の軍にとって、北朝鮮は最大の利権となっているのです。
軍がダミーの会社をたくさん興して、インチキの伝票を書く。たとえば、『日本から高性能の鉄鋼品をシンガポールに持って行くように見せて、実は北朝鮮に入れる』なんてことを平気でやっています。習近平国家主席は軍を統制できてないため、そういう行為を抑えることができません。北朝鮮のミサイル発射台に使われているのも、中国製の車両ですから」(同)