米軍が金正恩朝鮮労働党委員長を暗殺する“斬首作戦”も取り沙汰されたが、実際にどのような軍事行動に出る可能性があるのだろうか。
「“危険な首領様”の金委員長を排除することが中国との共通の利益ということで一致すれば、軍事クーデターなどのからめ手を仕掛けるかもしれませんね。彼の居場所さえ特定することができれば、ドローン兵器で狙い撃ちすることもできるわけですから」(同)
北朝鮮、在日米軍を狙ってミサイル発射の可能性
マティス国防長官は、6月12日の下院軍事委員会で「北朝鮮と戦争となれば、1953年(朝鮮戦争)以後、一度も見たことのない戦争になる。非常に深刻な戦争になる」「そうした戦争を遂行する上で、どのようなレベルの戦力が必要であっても、それに備えておかなければならない」と発言している。そのような全面戦争に発展する可能性もあるのだろうか。
「湾岸戦争やイラク戦争のとき、アメリカは原子力空母を4隻出動させました。北朝鮮を攻撃するとなれば、3隻は必要でしょう。6月の日米共同訓練で空母が投入されたことが注目されましたが、2隻でしょう。『あぁ、これはやる気がないな』と思いました。
そもそも、空母の居場所は軍事機密なので本来なら非公表が普通です。それを、わざわざ『日本海に展開する』なんて発表するのは、単なる威嚇以外に目的はないでしょう。
アメリカの空母は1隻に約160発のトマホークが装備されています。在韓米軍にも相当数が配備されています。在日米軍の空軍基地からはジェット機が、グアムからはB1戦略爆撃機が飛んでいきます。日時を決めて一斉に攻撃を仕掛けたら、同時に千カ所くらいの目標を爆破できるわけです。
北朝鮮はましなジェット戦闘機をほとんど持っていないし、高射砲も低空の範囲に届くだけ。ただひたすら核開発をしてきただけで、通常兵器に関しては防衛体制は弱いのです。これで仮に石油が止められていれば、戦車を動かすことも兵力を輸送することもできない。
国境近くの兵士が38度線を越えてくることはあるかもしれませんが、韓国は38度線上にロボット兵士を配置しています。赤外線で察知して、目標に向かって自動的に狙撃するという仕組みです。また、在韓米軍は北朝鮮のミサイルの射程距離から離れた場所まで基地を下げているため、アメリカとしてはあまり心配していないでしょう。
仮に戦争となれば、確かに韓国は被害を受けるでしょうし、ソウルは火の海になるかもしれません。日本にも、多少の被害はあるでしょう。ミサイルが残っていれば、北朝鮮が在日米軍の基地をめがけて撃ってくることも考えられます。
これは、当然の帰結です。日米安全保障条約があって在日米軍がいるのに、日本が巻き込まれないという話はあり得ない。ペンタゴンがどう見積もっているのかはわかりませんが、米軍にもそれなりの被害は出るでしょう。アフガニスタンでもイラクでも被害は出ていますが、それは軍人の務めだから仕方ない部分もある。アメリカの犠牲がゼロで済む作戦なんて、そんなにありませんよ」(同)
後編では、日本の防衛体制や中国経済崩壊の可能性について、さらに宮崎氏の話をお伝えする。
(文=深笛義也/ライター)