男性美容が注目される昨今、メンズ用のスキンケアやコスメ商品は花盛り。この数年、売り上げも堅調だ。なかでも「薄毛」の悩みに関しては、「カバーする」から「甦らせる」時代に解決策が大きくシフトし、その注目度も高い。
とはいえ、何をどうしたら薄毛にならない、また改善できるのかイマイチわからない人は少なくない。ドラッグストアやインターネットでは、さまざまな薄毛対策商品が売られ、実際に購入して使ってみたものの「肝心の効果は感じられない」と嘆く声は多いのが現実だ。
その半面、“カリスマ美容師”と呼ばれる人には、薄毛がほとんどいないという事実をご存じだろうか。
私事だが、美容ライターとして20年間、延べ1000人以上の美容師と仕事をしてきた。そのなかでわかったことは、「売れている美容師は薄毛ではない」という事実。
「プロだから?」……いや、プロだって禿げます。
「若いから?」……いや、40代や50代の方々でもフサフサです。
では、なぜ薄毛やハゲがいないのか。取材のたびにさりげなく生活習慣を尋ねていくと、共通する3つの生活習慣があった。
①シャンプーは「質とすすぎ」にこだわるべし
実は今、シャンプーへの注目度が過去にないほど高まっている。数年前から頭皮ケアが注目されるようになり、「洗うだけのシャンプー」から「頭皮をケアするシャンプー」へと進化し続けているのだ。
カリスマ美容師は、とにかくシャンプーへのこだわりが強い。ほぼ全員、頭皮クレンジング力に長けた高額シャンプーを使用し、その日のうちに頭皮の汚れをスポン!と根こそぎ落とす習慣を心がけている。
そして、すすぎに時間をかける。360度の方向からシャワーを当て、頭皮に振動を与えるように指の腹を動かし、浮いた汚れを流れ落としていく。
この工程だけで、薄毛の原因となる皮脂詰まりをしっかり取り除くことができるので、髪がまっすぐ太く生えてくるのだ。皮脂が詰まったままでは髪が細くなり、ゆがみやすい。
たかがシャンプーと侮るなかれ。シャンプーこそ髪の健康を左右する、もっとも大事なヘアケアなのだ。
②血行促進のケアを甘く見てはいけない
薄毛原因のひとつとして、血流不足がある。頭皮の血流が不足すると、栄養が行き届かなくなり、髪の成長を止めてしまうからだ。
最も大事なヘアケアであるシャンプーやすすぎのとき、プロは必ず指の腹を頭皮に当てて、襟足~頭頂部に向かってマッサージをする感覚で汚れを浮かせる。実はこれだけでも血行促進には効果がある。そして、タオルドライ後に頭皮用ローションや育毛剤を塗布する習慣が身についている。
女性ならイメージは容易かもしれない。たとえば、洗顔だけでは顔の汚れは落ちても肌は整わない。必ず化粧水をつけて潤し、肌の乾燥を防ぎ、肌の老化を食い止める。
頭皮も顔とつながる「肌」なのだから、育毛ローションなどで潤して栄養を与えることは、薄毛対策には必須と言っても過言ではない。もし「育毛剤が効かない」と不満を感じているならば、その使い方がおざなりになっていないか確認する必要がある。
ただつけるだけでは、毛髪の成長は見込めない。大切なのは、やさしく指の腹でマッサージしながら擦り込むことだ。お風呂上りの30秒だけでも、まずトライしてみよう。
③バレる前にパーマ! 崩れる前にスタイリング剤を駆使!
カリスマ級美容師ともなれば、ほぼ薄毛はいない。特に50代以上の超大御所美容師ほど、若々しく、たくましく、カッコいい(そしてモテる)。きっとこれは、髪のコンディションが世の一般男性と比べて断然優れているからだろう。
薄毛に見えるのは、毛髪そのものが細くなるほか、本来ならひとつの毛穴から3本程度生える毛が1本しか成長せずに密集度が減るためだ。しかし、プロの場合、そこに気がついたら潔くパーマスタイルにチェンジする人が多い。
パーマというと、「毛根に悪い」「頭がデカく見えそう」などと懸念する人もいるが、ご安心いただきたい。きちんとしたヘアサロンであれば、髪や頭皮にマイルドな薬剤を使用している上、俗に言う「ニュアンス感」に長けたパーマで上手にごまかせる。
ちなみに、ニュアンス感とは、揺らぎ感のあるヘアスタイルのこと。この揺らぎが空洞化した頭部の隙間にフワッとかかり、薄毛を目立たなくしてくれる。また、髪がペタンとしたり猫毛になると薄毛は途端に悪目立ちする。
これが男性用スタイリング剤を使用すれば、髪一本一本に「疑似筋肉」がついて、簡単にたくましいハリとコシが手に入るのだ。プロの隠し技をうまく利用するべきだ。
薄毛やハゲの原因はひとつではない。生活習慣の見直しやストレスを軽減することももちろん大事だ。だが、美容ライター業に長く携わり、多くの美容師を見てきた結果、上記の「3つの共通点」が浮かび上がった。
その気になれば、この3つなら誰でも実践できるはず。ただし、ヘアケアは一朝一夕でどうにかなるものではない。まずは最低半年を目安に始めてみてはいかがだろうか。
(文=小澤佐知子)