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西澤真生「仕事がデキる人の栄養マネジメント」

○○の不足、薄毛や男性不妊、味覚障害につながる可能性…医師が解説

文=西澤真生/ひめのともみクリニック 医師
○○の不足、薄毛や男性不妊、味覚障害につながる可能性…医師が解説の画像1「Thinkstock」より

 秋風がすずしい季節となりました。あれ? 頭もすずしいような気が……。実は、「髪の毛が抜けやすい」「髪の毛の張りやコシがなくなってきた」と感じやすいのも、この季節です。

 もちろん、男性型脱毛のように男性ホルモンが関係している脱毛もあり、男らしさや知性を表すものとして、必ずしも悪いことではないのですが、髪の毛自体に力がない場合はミネラル不足を疑いましょう。特に、男性は亜鉛、女性は鉄の不足が原因になっていることが多いです。

 ミネラル不足は髪の毛だけにとどまらず、パフォーマンス低下や病気予備軍にもつながる問題です。そこで、今回は亜鉛についてお伝えします。

亜鉛不足は味覚障害や抜け毛につながることも

 亜鉛といえば、不足すると味覚障害を起こすことが知られています。亜鉛は200種類以上もの酵素の反応にかかわっていて、亜鉛不足は幅広い障害につながります。舌にある味蕾には亜鉛酵素が豊富に存在するため、亜鉛が欠乏すると味蕾の特徴的な形態が失われて味覚障害が起こります。

 亜鉛がかかわる酵素には、アルコールを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素や糖の代謝に関係するアルドラーゼ、乳酸の代謝を行う乳酸脱水素酵素などがあります。「お酒が弱くなったな」と感じたら、亜鉛不足の可能性があります。

 細胞分裂にかかわるたんぱく質にも、亜鉛は関与しています。DNAを複製するDNAポリメラーゼや遺伝子のコピーをつくるRNAポリメラーゼ、染色体を所定の場所に移動させるたんぱく質にも亜鉛が結合しているのです。遺伝子と酵素の結合部位には「Zinc finger」(Zincは亜鉛のこと)という構造が存在することが多く、亜鉛によって安定化されています。

 亜鉛は細胞分裂にかかわっているため、細胞分裂が活発な部分ほど亜鉛不足の影響を強く受けます。粘膜や毛根などは細胞分裂が活発で入れ替わりも早いので、亜鉛不足になると口の周囲が荒れたり髪が弱く抜けやすくなったり爪がもろくなったりします。

 男性の性機能にも、大きな影響があります。1回の射精で数億個もの精子が放出されるので、精巣は常にケタ外れの回数の細胞分裂を繰り返しています。また、亜鉛は前立腺の働きやテストステロンの合成にもかかわっており、亜鉛不足は男性不妊の大きな要因になります。1回の精液には約1㎎の亜鉛が含まれるため、男性は亜鉛が欠乏しやすいのです。

牡蠣やナッツで亜鉛補給を

 先ほど述べたZinc fingerは、遺伝子からたんぱく質を合成するスイッチのオン・オフにもかかわっています。また、傷ついた遺伝子を修復する酵素にも亜鉛が結合しています。このように、亜鉛はすべての細胞で働いているので、不足すると体全般の機能低下や遺伝子の老化につながります。

 活性酸素を消去する機能にも注目です。亜鉛が結合するスーパーオキシド・ディスムターゼというたんぱく質は、活性酵素の消去に重要な酵素です。それだけではありません。亜鉛の摂取量が増えると、金属を結合するメタロチオネインというたんぱく質の合成が高まります。メタロチオネインは水銀などの有害重金属と結合して毒性を弱め、排出を促したり活性酸素を消去したりする働きがあります。亜鉛が「デトックスミネラル」といわれるのは、そのためです。

 インスリン分泌細胞である膵臓のβ細胞でも亜鉛が働いています。インスリンは亜鉛と結合して安定的な結晶を形成し、亜鉛ごと細胞外に分泌されます。亜鉛はインスリンの安定化だけでなく、分泌調節やインスリンの効き目にも影響を及ぼしているので、亜鉛不足は潜在的に2型糖尿病のリスクを高める可能性があるということです。

 夜や暗いところで目が見えにくくなる夜盲症はビタミンA不足が原因ですが、ビタミンAを摂っているのに夜盲症が治らない場合は亜鉛不足を疑いましょう。亜鉛がビタミンAを運搬するたんぱく質の合成やレチナールという光刺激を受ける物質への変換にかかわっているからです。

 普段からお酒を多く飲む人や糖分や加工食品を多く摂る人は、亜鉛不足になりやすいといえます。すでに糖尿病になっている人や食後だけ血糖値が高い糖尿病予備軍の人も、亜鉛の排泄が増えているので要注意です。

 亜鉛は牡蠣、レバーや肉類、煮干し、卵黄、ゴマ、ナッツ、カニ、高野豆腐などに多く含まれています。これからの季節に上手に取り入れたい食品ですね。

 サプリメントで摂る場合は、1回の量や1日の量を守るようにしましょう。ミネラルはビタミンに比べると許容量が狭く、ほかのミネラルとのバランスが問題になります。亜鉛の場合は銅とのバランスに気をつけながら、必要量をしっかりと摂取するように心がけてくださいね。
(文=西澤真生/ひめのともみクリニック 医師)

西澤真生/ひめのともみクリニック 医師

西澤真生/ひめのともみクリニック 医師

東京大学医学部医学科卒業。東京大学附属病院分院4内科入局。
ボストンに3年間滞在後、細胞膜とタンパク質の研究およびクリニック勤務。


ひめのともみクリニック開院時より内科・栄養療法・栄養解析を担当、これまでに全国3000人以上のデータを解析し、オーソモレキュラー医学に基づいた糖質制限や栄養療法の普及に尽力している。


薬に頼らない医療を目指し、予防医療や病気の根本的な解決を目的に日々診療にあたっている。栄養療法を応用し、幅広い知識と豊富な臨床経験に基づいた総合内科的見地からの的確な治療は、患者さんをはじめスタッフからも絶大な信頼を得ている。


糖質制限食を基本とした食事療法による糖尿病・メタボリックシンドロームの治療、機能性低血糖症、男女更年期症候群、副腎疲労症候群、アレルギー疾患、禁煙外来など。


西澤医師の診察予約をご希望の方は、「ひめのともみクリニックHP」をご覧ください。

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