一般社団法人日本クレジット協会の発表によれば、クレジットカードの不正使用被害は平成26年が113.9億円、平成27年は120.0億円、平成28年は140.9億円。ネットショッピングが普及したいま、その被害額は増え続けている。この被害の半数以上が番号盗用である。
実は筆者も昨年、明細書に見覚えのない請求があった。被害額は2万円弱、慌ててカード会社へ問い合わせたが、引き落としの期日が近いこともあって、一度引き落とされることになった。
カードの利用停止の手続きをし、引き続き調べてもらったところ、家電量販店でCPUを購入した履歴があるという。送付先は見知らぬ男性。それ以上の情報は個人情報保護の問題で調べられないので、本人が店舗へ問い合わせてほしいとのことだった。
この家電量販店は、ネットだけでなく実店舗も利用したことがない。そして、送付先は市区町村までしかわからなかったが、そのエリアに住む知り合いがいたことすらない。
今度はこの店へ問い合わせたが、やはりカード会社に提供した情報以外は教えられないとの一点張り。こちらから個人情報を伝える、必要があれば足を運ぶので照会してほしいと頼んでも、「それはできない」と断られてしまった。購入した(ことになっている)本人が問い合わせているにもかかわらずだ。
このとき、消費者センターにも相談するようアドバイスを受け、連絡をした。そこで教えられたのは、引き落としの期日前であれば、それを拒否することができるとのこと。通常はストップしてくれるはずだという。また、これまでの経緯を詳細に記したものをカード会社に内容証明で送るといいというアドバイスを受けた。
この顛末をカード会社に報告すると、次は警察に被害届を出すように指示された。しかし、警察に相談すると、今回のケースでは、被害者はカード会社にあたるため、被害届を出すことができない、本人でないと捜査ができないという。こうしたケースは保険で補てんするのが一般的なので、もう一度、カード会社と話してほしい、警察としては新たな被害を生まないために情報を共有するという回答を得た。
この経緯を三たびカード会社に報告したが、自分たちは被害者ではないから被害届を出せないと主張。しかし、あらためて調査をしてもらえることになった。
結局、さらなる手がかりは得られなかった。ただ、相談した警察官の名前や部署を逐一報告していたので、詐欺目的ではないことが理解され、被害額を返してもらえることになり、幕引きとなった。被害が発覚してから返金を受けるまで、2カ月ほどかかっている。
カード所有者は被害者ではない?
労力はかかったが、最終的にはお金を取り戻せたので損はしていない。しかし、未解決事項が多く、納得はいかない。こうした場合、誰が被害者になるのだろうか。
そこで、紳法律事務所の弁護士、丸山紳氏に話を聞いた。
「このケースは詐欺に該当します。詐欺の被害者はだまされた人、つまり、家電量販店となります。それ以外の人は告訴することはできませんが、告発は可能です。損害が生じた場合の補償規定は約款によりますので、あらかじめ確認しておくといいでしょう」(丸山氏)
カード所有者であるにもかかわらず、購入履歴や商品の送付先すらわからないことに苛立ちを覚えたが、「弁護士会照会制度によって、取引や発送先を販売者に確認することができる」という。迅速に解決したいなら、弁護士へ相談するといいそうだ。
筆者は複数のクレジットカードを所有しているが、被害に遭ったのはめったに使わないカードだった。それにもかかわらず請求書が届いたことで発覚したわけだが、日常的に利用しているカードで、細かく明細を見ていなければ気付かなかったかもしれない。
警察やカード会社から、犯人がつかまったら報告するといわれたが、1年が経過しても音沙汰はない。犯人は、今もまた同様の犯罪を繰り返している可能性がある。常にクレジットカードの利用状況を確認することはもちろん、セキュリティについても再度確認したいものだ。
(文=OFFICE-SANGA)