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江川紹子の「事件ウオッチ」第100回

麻生財務相、問題発言に対して「誤解」連発、条件付き「謝罪と訂正」…国会発言削除の危険性

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麻生太郎財務相(「アフロ」より)

誤解を招くような発言があったとすれば、謝罪を申し上げます」

 これは、麻生太郎財務相が、自身が行った事実に基づかない新聞批判について、国会で追及され、追い込まれた末に、ようやく口にした言葉である。果たして、これを「謝罪」と受け止めていいのだろうか。

発言は本当に「誤解を招きかねない」内容か?

「誤解を招いたとすれば」とか「誤解を招きかねない」といった表現は、不適切な言動があった政治家がしぶしぶ謝罪する時などに、しばしば用いられる言い回しである。

 たとえば、昨年6月の都議選で、稲田朋美防衛相(当時)が自民党候補の応援演説の中で「自衛隊としてもお願いしたい」と述べたことが問題視された時。稲田氏は「あくまで自民党の議員として応援をお願いした」と言い張り、しまいに、いかにも不満げに「誤解を招きかねない発言」だったとして撤回、謝罪の弁を述べた。

 最近では、謝罪ではないが、文科省前事務次官の前川喜平氏が名古屋市立の中学校で講演したことについて、同省が同市教委に“問い合わせ”をし、録音データを求めたことについて、林芳正文科相が「誤解を招きかねない面もあった」と述べ、担当の初等中等教育局長を注意したことを明らかにした。

 いずれも、国民にとって「誤解」の余地はない。それなのに、なぜ彼らは「誤解」という言葉を多用するのか。しかもそのうえ、しばしば「招きかねない」という回りくどい表現を使うのか。

 冒頭に挙げた、今回の麻生発言を例に考えてみたい。まず、麻生氏の発言に主語を加えて、行為の主体をはっきりさせてみる。すると、発言は次の3つのパートに分けられる。

「あなたが誤解する」
「そのような発言を私がしたとすれば」
「私は謝罪を申し上げます」

 最初のパートで明らかなのは、「私(=麻生氏)」の発言意図を誤解するのは、「あなた(もしくは国民)」だ、という点。「私」の発言意図とは異なるように、あなたが受け止めた。そのために問題が生じた、ということだ。つまり、今回の問題の原因の一部は、「誤解」してしまった「あなた(もしくは国民)」にあると、責任転嫁をしている。

 麻生氏は、これまでも問題発言をしては、「誤解」を連発してきた。

 2013年、憲法改正について「ナチスの手口を学んだらどうか」と発言して批判された時には、次のようなコメントを発表した。

「私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である」「誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示として挙げたことは撤回したい」

 2017年には、講演でまたもやナチスを例に挙げ、「(政治は)結果が大事なんですよ。いくら動機が正しくても何百万人殺しちゃったヒトラーはダメなんですよ」と述べた。これが、「ユダヤ人大虐殺を行ったヒトラーの動機は正しかったのか」などと国内外から批判を浴びた。

 この時にも「私の発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾」とし、「ヒトラーを例示として挙げたことは不適切であり撤回したい」と述べた。

 いずれも、自分は間違っていない、しかし、発言の真意を理解できない人たちが「誤解」したので、そのことは遺憾であり、発言を撤回する、という流れである。

 自分の発言や表現方法に問題があったのではないかという自省は、そこでは限りなく薄められている。というより、同じような失言をくり返すところを見ると、自省はまったくなかったのだろう。

 今回の、新聞に事実無根の文句をつけたことについての「謝罪」には、「誤解」だけでなく、「あったとすれば」が加わっている。「する」の仮定形に、仮定・条件の意味を表す接続助詞「ば」をつけた「すれば」については、いちいち文法を持ち出すまでもなく、「仮にそういうことがあったとするならば」という仮定・条件を示す言い回しであることは、日本語を母語とする話者であれば容易にわかるだろう。

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