この春、多くの人々が新生活を迎えるなか、女性向けブランドのサマンサタバサでは「Samantha U」と名付けられた“アンドロイド社員”が入社し、話題を集めた。
最新ファッションに身を包んだ“彼女”は、かつてマツコ・デラックスの等身大アンドロイドを製作したこともあるA-Lab社によって誕生。3月下旬から4月上旬には店舗にて入社前研修を受け、実際に接客を担当したという。自身のTwitterアカウントも運用しているが、プロフィール欄に「特技:疲れない」と記している点は、まさにアンドロイドならではの強みをアピールしているといえるだろう。
アンドロイドといえば、2015年7月に長崎・ハウステンボスに開業し、「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」としてギネス認定された「変なホテル」は、千葉・舞浜や東京・銀座など、国内で次々と新規出店が進んでいる。
このように、ロボットの社会進出は日に日に目立ってきているわけだが、たとえば10年後をひとつの目安とした場合、世の中はどのように変化するのだろうか。人間の代わりにロボットが活躍するシーンは、どれくらい増えるのだろうか。ロボットに関する調査やコンサルティングを専門とする、ロボットメディア代表取締役の小林賢一氏に話を聞いた。
AIとロボット本体の開発スピードには大きなギャップが存在
まず小林氏は、「ロボットの社会進出を考えるうえでは、現状を見る視点と、未来を長い目で見る視点とに分けることが重要」だと強調する。
「AI(人工知能)とロボットは、今世紀のコアテクノロジーだということは間違いありませんが、それは30年や50年といった長いスパンでとらえたほうがよいと思います。
AIはコンピューター上で開発されるため、技術の進展は早いのですが、それに比べてロボットは機械、モノ作りの部分なので、人々が思っている以上に思惑通りにはいきません。
ロボットは“絵”になるので、『ついにこんな時代が来ました』とすぐニュースで取り上げられることも多いですが、ロボットの“頭”になるAIがたとえ一気に進化したとしても、それに見合った“身体”を用意するのは難しいのが現状です。特に、『ルンバ』に代表されるサービスロボットは人と直に接する環境のため、安全性を十分確保しながら、慎重に開発していく必要があります。