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北朝鮮・金正恩の親戚、最高幹部が米国へ亡命で捕獲作戦か…重要機密情報を米国に提供か

文=相馬勝/ジャーナリスト
北朝鮮・金正恩の親戚、最高幹部が米国へ亡命で捕獲作戦か…重要機密情報を米国に提供かの画像1北朝鮮・金正恩氏が3度目の訪中(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

 北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長と同じ曾祖父を持つロイヤルファミリーの一員で、秘密警察組織である国家保衛省のスパイ摘発部門最高幹部の1人が今年2月、脱北していたことがわかり、激怒した金委員長が同幹部の捕縛を命じ、軍や国家保衛省から計10人の追っ手を差し向けていたことが明らかになった。しかし、同幹部はすでに米国に亡命したとの情報もあり、先の米朝首脳会談を前に北朝鮮の機密書類が米側の手に渡った可能性がある。

 この人物は国家保衛省の50歳の大佐。大佐の曾祖父は金日成元国家主席の母、康盤石氏の父である康敦煜氏。大佐と正恩氏は康委員長のひ孫で、2人は親戚関係にある。大佐の名字は康だが、名前は不明。ここでは便宜上、康氏と呼ぶ。

 康氏は北朝鮮との国境を接する中国吉林省や遼寧省など中国東北3省における脱北者や外国人スパイ摘発の最高責任者だった。この地域は中国のほか、韓国や米国など北朝鮮情報を収集する外国人諜報員が暗躍していることで知られており、北朝鮮にとってスパイ摘発の最重要拠点だけに、北朝鮮指導部の大佐への信頼は厚かったとみられる。
 
 これも、康氏が金委員長と同じ曾祖父をもつことが最大の理由だ。金氏とは遠い親戚とはいえ、ロイヤルファミリーの一員とみなされていたことは間違いない。それだけに、金委員長は同じ金日成一族から脱北者を出したことに激怒したとされ、「草の根分けても探し出して、俺の前に連れて来い。高射砲で粉々にしてやる」などと指示したという。

北の重要機密情報を持ち出しか

 しかし、北京の外交筋によると、康氏は欧州のある国の米国大使館に駆け込み、亡命申請を行っており、今年5月には、すでに米国に移送されたとの情報があるという。

 康氏は北朝鮮が関わっている精巧な偽造米ドル札の銅製の原版や大量の外貨のほか、北朝鮮の詳細なスパイ組織網、核兵器貯蔵基地などに関する重要機密書類を持ち出しており、米国に亡命したことが事実ならば、米政府は康氏の証言や北朝鮮の国家機密に関わる大量の重要書類を解析し、北朝鮮の軍事情報などを得ている可能性が大きい。

 北朝鮮情報専門ニュースサイト「ディリーNK」によると、北朝鮮指導部は強い危機感を抱き、4月から6月上旬までの2カ月間、内部の規律引き締めのため、国家保衛省幹部を集めた学習会を集中的に行ってきたという。

 同筋は「米国政府関係者はこの事実を一切認めていないが、先の米朝首脳会談を前に、康氏から得た機密情報について、北朝鮮に完全な非核化を求めて揺さぶりをかける材料として使ったとも考えられる」と指摘している。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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