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築地市場移転に暗雲か…東京都、仲卸業者に費用自腹強制と営業権侵害か…移転決議無効も

文=片田直久/フリーライター
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築地市場移転に暗雲か…東京都、仲卸業者に費用自腹強制と営業権侵害か…移転決議無効もの画像1前列左から中澤、熊本、村木、宮坂、山口、和知の各氏(都庁記者クラブ記者会見場)

 築地市場豊洲移転問題が、またも転換点を迎えた。仲卸業者14人が発起人となり、6月21日に「築地市場営業権組合」(以下、築営)が発足したのだ。

 仲卸とは、築地のような卸売市場で働く業者のひとつ。市場に届き、卸売業者が並べた食品を競りで買い入れ、小分けにして小売店や飲食業者に販売する。水産物をはじめ、食品の評価と分荷を担うプロたちだ。築地の水産部には、約600社の仲卸業者がある。

 築営の共同代表には、宮原洋志(明藤商店4代目社長)、村木智義(ムラキ取締役)、山口タイ(築地女将さん会会長)の3名が就任。総会後、東京都庁で記者会見を開いた。

 会見では、共同代表と監事の和知幹夫氏(小峰商店社長)以下、発起人全員が登壇。この間、発起人らと築地で勉強会を重ねてきた熊本一規・明治学院大学名誉教授(環境政策・環境経済)も同席した。司会は築営参与で東京中央市場労働組合の中澤誠執行委員長が務めた。

 築営が打ち出したのは、組織の名前にもある「営業権」。会見の冒頭で、村木氏がこう発言した。

「築地市場の各事業者に営業権が存在することを確認し、卸売市場の移転等が計画される際に、組合員が正当な権利者として交渉権・発言権を行使できるよう最大限の努力をしていく」

 営業権とは何か。熊本氏が解説した。

「営業権は、法人や個人事業者が営業活動をする上で持つ財産権の一種。土地所有権などと違い、形はないので特許権や著作権と同じ性質です。営業権を主張できるケースには主に2つあります。ひとつは行政機関から法令に基づく特許や許認可を受けて営業している場合。もうひとつは、長年築き上げた名声や信用に基づく『のれん』がある場合。仲卸業者はいずれの根拠においても営業権を持っているといえる」

 豊洲への市場移転、築地の解体によって、仲卸業者の持つ営業権は消滅することになる。憲法29条の要請により、財産権が侵害され、損失が生じた場合には必ず補償されなければならない。

 築営は「仲卸業の豊洲移転を決められるのは営業権の権利者である各仲卸業者。権利者ではない東京魚市場卸協同組合(以下、東卸)には決められない」と主張する。

 築地の仲卸でつくる東卸は1998年12月、臨時総代会で「現在地(築地)再整備」を一旦可決。だが、2014年11月の総代会で伊藤淳一理事長(当時)が「白紙」を宣言し、拍手で承認を得た。築地の仲卸が豊洲に移転する根拠は、この「決議」にある――これまで、そう説明されてきた。豊洲移転に当たって、仲卸業者は引っ越し費用をはじめとするコストは自腹で払っている。

 だが、築営はこの「決議」の効力を根底から否定した。「移転を決められるのは営業権を持つ仲卸業者。東卸の総代会『決議』は権利のない者が勝手に声をあげただけで無効」(熊本氏)だからだ。この主張の切っ先は東卸を向いているだけではない。これまで交渉の主体を業界団体に絞り、個々の業者との話し合いに応じてこなかった都の対応自体が問われている。

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