9月の自民党総裁選に、にわかに注目が集まり始めている。そんななか、有力候補と目されていた岸田文雄党政調会長は出馬を断念し、安倍晋三首相支持を打ち出した。一方、出馬に意欲を見せてきた野田聖子総務相は、金融庁の情報公開請求漏洩問題のスキャンダルが直撃し、出馬は困難な情勢。こうして安倍首相と石破茂氏が一騎打ちの様相を見せているが、石破氏は党内議員からの人望がないため支持が拡大せず、安倍首相の3選は堅いといわれている。
「安倍3選後に内閣改造が行われますが、人事一新の組閣名簿も出回っているようです」と語る政治ジャーナリストの朝霞唯夫氏に、話を聞いた。
――自民党総裁選はどのような展開になるのでしょうか。
朝霞唯夫氏(以下、朝霞) まず私は以前から「岸田氏は出馬しない」と指摘してきました。その理由は、安倍首相からの禅譲を狙ってのことです。総裁選に出馬した際、岸田氏は最低でも2位になる必要がある。伝統ある派閥で規模の大きな宏池会会長としては当然ですが、四つ巴になった場合、下手すると4位になってしまう公算があったのです。
4位になった場合、岸田氏の影響力は大幅に低下します。もともと岸田氏は「勝つ勝負しかしない」というのが持論で、そこで総裁選で勝利するにはどの道が良いかと模索してきましたが、現実的には2位にすらなれない可能性もあるということで出馬を断念し、安倍首相からの禅譲を待つというポジションになったのです。そして内閣改造で宏池会を優遇してもらうことを狙っています。
――宏池会から不満は出ませんか。かつて佐藤栄作が宏池会の前尾繁三郎に甘言を用いて総裁選出馬を断念させたことで、前尾は若手から嫌われ、会長職を降ろされたという歴史があります。
朝霞 まさに歴史は繰り返すですが、反安倍である林芳正文科相は不満を抱いていますが、宏池会全体としては仕方がないと諦めているのでしょう。
――岸田氏4位の観測は意外ですが、なぜですか。
朝霞 安倍首相はこの春から地方も回り、総裁選の票固めに努めてきましたが、岸田氏は地方行脚をせず、総裁選で戦う努力もしてこなかったのです。議員票を一定数獲得しても地方票では圧倒的に負けますから、仕方がないですね。
――石破氏は前々回の総裁選でかなりの地方票を獲得しました。今回はいかがですか。
朝霞 今回は難しいですね。地方票でも安倍首相が盛り返していると聞いています。安倍首相と石破氏が仮に地方票数で4対6となっても、議員票では安倍首相が圧倒しますから、横綱相撲の成果が表れてきたということです。
組閣名簿が出回りか
――こうなると“安倍3選”は決まったようなものですね。
朝霞 実際、そうなるでしょう。ただし、私はまだ見ていませんが、永田町では内閣改造の際の組閣名簿まで出回っているということです。
――まだ総裁選まで2カ月ほどありますが。
朝霞 それだけ話題のネタがないのです。安倍氏の支持に回った清和会、宏池会、志帥会(二階派)、志公会(麻生派)で内閣や党要職のポスト争いがすでに始まったということです。永田町の話題としては、安倍首相の3選は確実で、各ポストは誰がどうなるということに終始しています。