BBC、CNN、ロイターなど、欧米主要メディアまで注目する人気音楽グループ・BTS(防弾少年団)の「原爆Tシャツ」騒動。日本のテレビ出演中止は11月9日放送の『ミュージックステーション(Mステ)』(テレビ朝日系)にとどまらず、「年末の音楽特番の出演が全て白紙になった」(「スポニチAnnex」より)とも伝えられている。さらに「原爆ブルゾン」「ナチス帽」など、その後も新たな炎上ネタが次々と浮上。加えてナチスを想起させるイメージのステージ演出を行っていたこともわかり、世界的なユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)」が11月11日に抗議声明を出す事態にまで発展している。
「過去を忘れた民族」
一連の事態は韓国でどう受け止められているのか。
まず東京スポーツによると、原爆Tシャツ騒動は10月中旬の韓国メディア報道が発端だという。媒体名は記されていないが、これはオンラインニュースサイト「Newsen」の10月16日付記事だろう。それによると、メンバーが原爆Tシャツを着ている写真は昨年撮影され、10月13日に改めてSNSに登場。「韓国の解放=光復」を記念するTシャツとして韓国人ファンの多くから好評を得たものの、日本のファンからは配慮が足りないとの非難も寄せられたという。
記事ではまた、13年の8月15日にリーダーのRMが「過去を忘れた民族に未来はありません」とツイートしていたことにも触れている。「過去を~」は、歴史認識問題をめぐって韓国が日本を非難するお決まりのフレーズだ。
東京スポーツ報道に韓国メディアが反論
この報道を元に問題を報じた東京スポーツの10月26日付記事は、「(韓国人は)一度たりとも自らの血を流して独立を勝ち取ったことがない」ことへのコンプレックスがあるといった分析を紹介。これに複数の韓国メディアが反論するかたちで、韓国国内での非難が拡大していった。「事実を忠実に伝えていないゴリ押し記事」「Tシャツは光復を記念しているだけ」「日本ツアーのチケットは完売している」(10月29日付スポーツ京郷)、また韓国ファンの声として「BTSに対する日本のコンプレックスが如実に表れた記事」(10月29日付国民日報)といった具合だ。
論争にすすんで参戦する文化人もいる。かねてから竹島問題などをめぐるキャンペーンを海外で繰り広げているソ・ギョンドク誠信女子大学教授もその1人だ。ソ教授はSNSを通じ、東京スポーツ記事について「とんでもない言いがかり」「BTSの発言が世界的に大きな影響力を持つことを恐れている」と発言。これがまた現地メディアに取り上げられる展開となっている。
騒動は日本の「オウンゴール」?
11月8日になって「Mステ」出演キャンセルが明らかになると、今度は「政治報復疑惑」が韓国メディアに噴出し始める。日本企業の敗訴が確定した10月30日の徴用工訴訟判決への報復として、日本の政界が韓流締め出しを図ったのではないか、との見方だ。