日銀株は、ジャスダック市場で売買ができる。正確にいえば、株主ではなく出資者、株券ではなく出資証券ということだ。出資証券がジャスダックに上場され、株式に準じて取引されている。表示されている数字は株価ではなく出資証券の価格。売買単位も株数ではなく口数と呼ぶ。取引の1単元は100口だ。
日銀株を買い占めて大株主になれば、お札を自由に発行できるのではないか、などと夢々思わないほうがいい。出資者は経営には関与できない。株主総会もなければ、議決権もない。役員選任にだって、賛成も反対もできないのである。
日銀法の規定により出資証券の保有者への配当は資本金の最大5%以内に制限されている。日銀の資本金は1億円。資本金が1億円の中小企業は珍しくない。日銀は中小企業なみの資本金でしかないのだ。配当原資は1億円の5%で、たったの500万円。1単位あたりの売買価格と配当金を基準に投資利回りをはじくとゼロに近い数字となる。
日銀を解散させて、莫大な資産を出資者で分配しようぜというわけにもいかない。日銀が解散した場合でも、残余財産の分配はない。出資者へ戻る金はゼロ。日銀法では全ての財産は国に帰属することになっている。
とても魅力的な投資先とはいえそうもないのだが、どんな人が出資しているのだろうか。日銀は政府から独立した法人とされ、公的資本と民間資本が入っている。資本金1億円のうち、政府が55%の5500万円を出資し、残り45%にあたる4500万円が政府以外となっている。2012年3月期時点の政府以外の出資者は、個人が37.8%、金融機関2.3%、公共団体等0.2%、証券会社0.1%、その他法人4.6%だ。個人がやけに多い。
個人とはいったい誰なのか。日銀の資本金の最大の謎だろう。だが、これ以上の情報の開示はない。
お札を発行する総元締めの日銀の株価が急落したのには理由がある。7月26日の3万4400円は27年ぶりの安値だ。バブル景気真っ盛りの88年の高値、75万5000円からみれば大暴落となる。安値は84年の1万8000円だから日銀株はかなり値動きが荒いことが分かる。
なぜ、日銀株は下落したのか。理由ははっきりしている。日本国債が信用されなくなったためだ。