4月1日の消費増税が景気にどのような影響を与えるのかという点に関心が集まっているが、デフレ脱却と景気回復を探るうえで株式相場と同様に注目すべきは、不動産市場だ。政府の審議会で数多くの委員を務める不動産コンサルタント・長嶋修氏は1月16日に開催されたセミナー「どう動く? 2014年不動産市場を大胆予測」内で、アベノミクスと五輪開催決定などで好調だった昨年の不動産市場は、今年も好調を持続しそうだと語った。昨年は不動産関連の指数が軒並み好転。例えば、不動産投資信託(REIT)は35%アップ、土地取引件数は9年ぶりに増加し120万件、都道府県地価調査で3大都市圏地価は5年ぶりに上昇、特に東京圏商業地の基準地価上昇地点は443となり、前年の11倍だ。
ただ、長嶋氏は現在の不動産好景気は限定的であると話す。
「日本の地価上昇局面は、これまで岩戸景気、列島改造、バブルと大きく3回ありました。今年も地価は上昇するとみられますが、今回は東京都心・湾岸、あるいは大都市中心部だけにとどまる見通しです。例えば、さいたま市全体で見れば相変わらず地価は下落していますが、大宮駅周辺の大規模開発が行われている地域は値上がりしています」(長嶋氏)
不動産市場の変動要素はいくつもあるが、まず、工事費・人件費は、この3年間で30%近く高騰している。ただ、デベロッパーはマンション価格の引き上げには慎重らしい。長嶋氏は「床面積・仕様を抑えながらも価格10%程度アップが既定路線」だと語る。
●相続税控除縮小、国の各種政策の影響
次に税制改正の面では、2013年度税制改正により、相続税の基礎控除が縮小される。つまり増税だ。15年1月1日以降の相続から適用になるため、相続税対策でアパート建設をしたりタワーマンションを購入するなどの動きが昨年後半から顕著になってきた。相続増税実施まで1年を切り、この流れも加速する。
自民党が推進する国土強靭化計画や東京五輪関連も景気には追い風だ。東京メトロ半蔵門線・住吉駅と有楽町線・豊洲駅をつなぐ「地下鉄8号線」計画などはその代表例であるが、沿線の地価が上昇するのはまだ先の話だと長嶋氏は見ている。
「整備地域になって投資マネーが入る土地の容積率を上げれば地価が上昇するのは当たり前であり、あとはどの程度上がるのかが問題です。東京五輪に合わせて外国人観光客をどのように誘致しようとしているのか、政府の政策からはまだ見えません。そして、地下鉄8号線計画は以前からありましたが、前倒しになるかもしれないという噂です。ただ、新線に関しては、計画が発表になった段階では地価は動きません。工事が着工されても動かない。開通してから少しずつ上がり始めます」(同)
国土交通省の政策も大きく影響する。国交省は質の高い中古住宅の供給を増やすため、耐震性や省エネ性能を高めるリフォーム工事に対する新たな支援制度を今年創設する。中古住宅を購入してリフォームすれば、最大200万円の補助金が出る。
「当初、補助金は100万円でしたが、業界内から『少ない』という声が出て最大200万円になりました。ただ、本格的にリフォームすればすぐに500万円くらいはかかるので、波及効果は大きいといえます。今後の課題は、中古住宅の評価手法と仕組みの確立です」(同)