しかし、ある大手消費者金融の社員は、こうした声に異を唱える。
「確かに、総量規制は業界にとっては痛手だった。だが、貸金業法改正から間もなく4年がたち、振り返ってみると、むしろ消費者にとって消費者金融を利用しやすい環境が整ったのではないだろうか。かつての消費者金融は俗に“サラ金”と呼ばれ、ともすれば声に出しては語れないイメージがあった。しかし今では銀行との関係が密接になったので、利用者が消費者金融に対して抱いていた悪い印象は薄らいできた感がある」
06年ごろから過払い金返還請求が急増して経営が破綻する消費者金融が続出し、各社は銀行の傘下に入った。その後、銀行と合弁会社を設立し、「フリーローン」「カードローン」などの名称でその合弁会社が個人を対象に実施している融資業務を実質的に行っている。つまり表向きは銀行系ローンと思われているが、実態は消費者金融が下請けをしている格好だ。
「銀行ローンは、総量規制の対象外。したがって消費者金融で借りられなかった人も、銀行系ローンに申し込めば、融資を受けられる可能性がある」(同)
このことから、借入額が年収の3分の1を超えた人は、月々の支払いが苦しくなった時に、その受け皿として銀行ローンを用いて当座をしのぐ人も少なくないだろう。
「改正貸金業法が施行された当初、『なんて迷惑な制度を設定してくれたんだ』と思ったが、この制度によって、借り手が消費者金融で融資枠いっぱいまで借りて、それを返すために銀行を利用するという流れができた。裏を返せば、銀行と消費者金融の棲み分けをうまくさばいてくれたものだと思える」(同)
●申込人のウソに気付いていても融資する消費者金融
消費者金融の窓口で、新規借り入れの申し込みがあった場合、他の消費者金融や銀行でいくら借りているのかなど、審査のために聞き取りを行う。もし、他社から総額100万円以上の借り入れがあれば、収入証明書などの提出を求める。
だが、この収入証明書にはちょっとしたカラクリがあるという。会社員はもちろん、自営業者や自由業者、さらには主婦、フリーターといった固定収入がない人にも多額の融資をしている裏を、前出の消費者金融社員は次のように語る。
「自営業者などの収入証明書としては、原則、確定申告書の写しを求めている。写ししか求めない銀行や消費者金融業者としては、借り手であるお客が提出した書類を信用するしかない」