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事実婚、消える法律婚との差?メリットの多さに関心高まる「妻(未届)」

文=前野彩/ファイナンシャルプランナー
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 全国で、年間約67万組が婚姻届を、約24万組が離婚届を役所に提出している。

 これらの届け出に加えて、新たに登場した「恋届」がNHKのニュース番組で取り上げられるなど、話題になっている。

「恋届」は、千葉県流山市が映画の撮影記念につくった期間限定の企画モノで、市役所が発行しているが、婚姻届のような法的な拘束力があるわけではない。もちろん、片思いの相手に恋心を届けてくれるわけでもない。いわば、「今、わたし恋をしています」とか「片思いです」という恋の記念スタンプのようなものになるのかもしれない。

事実婚を証明する「妻(未届)」「夫(未届)」

 一方、正式な役所の書類にも、法的に通用する「妻(未届)」「夫(未届)」という言葉があることはご存じだろうか?

 社会人なら誰もが一度は手にしたことがある住民票には、「世帯主との続柄」欄がある。
「恋届」ならぬ「婚姻届」を出した場合、多くは夫が世帯主になり、妻は続柄欄には「妻」と記載するが、「妻(未届)」や「夫(未届)」という記載をすることがあるのだ。

「何それ?」「どんな人が利用する制度?」などと疑問がわくことと思うが、これを利用するのは「事実婚」を選択した人だ。

「事実婚」とは、当人同士の意思により、入籍はしないけれど社会的には入籍をしている夫婦と同様の状態にある2人のことを指す。

「夫婦別姓」と混同されることもあるが、夫婦別姓は「婚姻届」を出しており、通称として職場などでは旧姓を使うものであり、事実婚とは異なる。

 また、「同棲」との違いも疑問に思うかもしれないが、明確な結婚への意思があるかないかという点で、同棲もやはり「事実婚」と異なる。

 しかし、同棲も事実婚も婚姻届という手続きを踏まないため、「結婚の意思」は外見からはわかりにくい。そこで、社会的な手続きが必要な場合に、事実婚であることを証明する場合に使うのが「妻(未届)」や「夫(未届)」という住民票の続柄記載なのである。

 あまり目にすることはないだろうし、何かの手続きの際に提出する場合に、「なにこれ?」という怪訝な顔をされることもあるが(事実婚を実践中の筆者にも、実際にそんな経験がある)、法的に認められた記載方法なのである。

事実婚のメリット、デメリット

 なお、事実婚でも法律婚と同じく、扶養も可能であり、遺族年金などの受取人にもなれる。住宅ローンを夫婦で組むことができるし、携帯電話や自動車保険の家族割引も使える。
保険会社によっては、生命保険金の受取人にもなれる。そして、事実婚を解消するときの財産分与や慰謝料請求、年金分割だってできる。

 事実婚のメリットは、個人の尊厳や自立という精神的な面もあるが、実生活では、改姓の連絡や事務手続きなどがない点が挙げられるだろう。特に、女性の関心が高い。

 もちろん、婚姻届を提出していないのでデメリットもある。配偶者ではないから、配偶者控除などの税金の控除は使えないし、パートナーが亡くなったときに自動的に相続人にもなることはできない。

 ただし、上記2つのデメリットには対応法もある。

 事実婚を選択する夫婦は共働きで自立している場合が多い。夫婦それぞれに収入があれば、そもそも配偶者控除の利用はないので気にする必要はない。相続については、生前に遺言を書くことで財産を相続させることができる。

 また、子どもが生まれた場合でも、最高裁にて非嫡出子の相続分が嫡出子の半分とする民法の規定は違憲との判決が出て、昨年12月5日に民法が改正され、嫡出子も非嫡出子も相続分は同等になった。これにより、法律婚と事実婚の両方で子どもがいる場合の不利益も解消される。

 現在の結婚のルールは1948年に施行された民法によるが、今回の改正のように、今後はさまざまなライフスタイルが選択できる時代になるだろう。

 ちなみに、筆者も「恋届」を入力してみた。実際にやってみると、入力中は純粋な気持ちになれた。現在「恋愛中」の方も、恋愛から「婚姻届」に進んだ方も、出会ったころの「恋心」を思い出して書いてみてはいかがだろうか。
(文=前野彩/ファイナンシャルプランナー)

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