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ケースで見る!「働くハイスペック女子」への処方箋

疲弊するハイスペック女子たち…高学歴・高収入・美人ゆえの「生きにくさ」

文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表
疲弊するハイスペック女子たち…高学歴・高収入・美人ゆえの「生きにくさ」の画像1「Thinkstock」より

 いわゆるハイスペック女子とは、高い能力を持つ女子(いちおう年齢不問ということにしておきます)であって、一般にはこれらに加えて、有名ブランド大学出身で高収入の女子のことを指すことが多いようです。もちろん、ハイスペックであるかどうかは、周囲の人たちの相対的な評価によるものなので、何か一定の客観基準のようなものがあるわけではありません。

 ただ少なくとも、世間が認めるようなブランド大学を卒業していれば、能力が極端に低いということは考えにくく、また相対的に(本人または家が)高収入である可能性も高いはずですから、ハイスペック女子であることの判断基準のひとつは学歴であるともいえるのかもしれません。彼女たちの多くは経済的に恵まれた家庭で厳しく育てられてきていて、負けず嫌いのがんばり屋さんです。競争心が強くて厳しい仕事でもしっかりとがんばれる一方で、キャリアを簡単には捨てられない気持ちが足かせになって不自由や閉塞感を感じていたりもするようです。

 私はこれまで、20社以上のさまざまな業種や規模の会社で社員のメンタルヘルスを受け持ち、1万人の社員面談をしてきました。女性同士の気安さからか、もともと健康面だけでなくキャリアや家庭生活などの相談を女性から受けることが多かったのですが、とりわけ、『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社新書)を2017年2月に出版させていただいてからは、ハイスペック女子に関する周囲または本人からのお悩み相談が一段と増えてきている実感があります。

 世間的に羨望を集める高学歴、高能力、高収入(場合によってはこれらに加えて高ビジュアル)であったとしても、実は非常に強いストレスに日常的にさらされ、結果としてメンタル不調に陥ってしまっている人たちが少なからずいることを、日々大変残念に感じています。

 近頃、ハイスペック女子について、出版以外にもインターネットや他の媒体で記事を書く機会を頂戴することが増えてきました。「あなたは医者なんだから、そんなエッセイめいた個人の物語じゃなくて、もっと医学的なことを書きなさいよ」という厳しいご意見をいただくこともあります。少し込み入った話になって恐縮ですが、私は、社会医学の一分野である産業保健とメンタルヘルスを専門としています。普通の臨床医は患者さんの病気をみますが、産業医は社員個人をみるだけでなく、その人を取り巻く職場の状況を改善します。さらに必要があれば、家族のあり方を含めた私生活に介入していくこともあります。個人の物語をことこまかに記録し分析することなしに、業務に関係した健康上の不調の根本的な原因や、適切な問題解決策にたどり着くことはできないのです。

矢島新子/産業医

矢島新子/産業医

矢島新子
山野美容芸術短期大学客員教授。ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒。パリ第1大学大学院医療経済学修士、WHO健康都市プロジェクトコンサルタント、保健所勤務などを経て産業医事務所設立。10年にわたる東京女子医科大学附属女性生涯健康センターの女性外来、産業医として数千人の社員面談の経験より、働く女性のメンタルヘルスに詳しい。著書に『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社新書)ほか。
株式会社ドクターズヘルスケア

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