大王製紙「エリエール」
製紙業界4位の大王製紙の株主総会は6月26日、愛媛県四国中央市の大王製紙技術開発本部コンベンションホールで開かれた。総会では発行済み株式の21.65%を保有する筆頭株主、北越紀州製紙が、大王の佐光正義社長再任に反対する議決権を行使した。北越紀州は製紙業界5位である。
大王が開示した「臨時報告書」によれば、総会における佐光社長への再任賛成割合は71.2%。北越紀州が筆頭株主として社外取締役に送り込んでいる近藤保之氏の賛成率は56.9%で、辛うじて可決された。賛成票90%が信認の目安といわれている。
佐光社長は株主総会後の記者会見で「(2015年3月期までの3カ年)事業計画をやり抜いたことが株主に支持された」と強調した。業績立て直しに向け、佐光社長はティッシュペーパー「エリエール」や紙おむつなど家庭用紙事業に注力。中国、タイなど海外展開も加速させた。その効果で15年3月期の連結売上高は前年同期比4.7%増の4502億円、当期純益は2.1倍の132億円に拡大。ROE(株主資本利益率)は前年の6.1%から10.0%へ大幅にアップした。「株主から支持された」と胸を張ったゆえんである。
佐光社長ら経営陣は株主総会で再任されたとはいえ、筆頭株主の北越紀州との抜き差しならない対立が収まったわけではない。
北越紀州と大王の対立再燃
4月1日、北越紀州と業界6位の三菱製紙が販売子会社の経営統合に向けた検討を中止したことから、北越紀州の岸本晢夫社長と大王の佐光社長の対立が再燃した。北越紀州と三菱は14年8月、販売子会社の統合で基本合意し、北越紀州・三菱の組み合わせで業界の第三極づくりに動いた。しかし今年4月、三菱側の意向で統合の協議は打ち切りとなった。
北越紀州は、三菱との関係を深めたいとする大王側の意向が働いたと疑いの目を向ける。岸本社長は6月16日に開いた15年3月期の決算説明会で、「(北越紀州と三菱が)販社統合で合意した後に、大王と三菱が統合に向けた秘密保持契約を締結した、と三菱の鈴木邦夫社長から聞いた」と爆弾発言をした。そして「大王の要請で、契約に『(三菱は)北越紀州との販社統合の交渉の過程を大王に報告しなければならない』とする条項が入った。そのため、(三菱は北越紀州との)販社統合を進められなくなった」と舞台裏を明かした。
岸本社長は破談の経緯をめぐり、大王の佐光社長に面談を求めた。大王は同日発表したコメントで「(販社統合は)北越紀州の利益のためであり、当社の企業価値の向上や株主の利益を目的とはしていない」と反発し、面談を拒否した。