ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
フォルクスワーゲン・ジェッタ(「Wikipedia」より/Hatsukari715)
VW本社は事態を重く受け止め、9月20日には最高経営責任者(CEO)のマーティン・ウィンターコーン氏が声明を発表した。違法なソフトウェアの使用については言及していないが、外部調査委員会を立ち上げて全面的に調査するとコメントしている。さらに23日には責任をとってCEOの職を辞任した。
VWはディーゼル技術で世界をリードしているメーカーだけに、なぜこのような問題が起きたのか疑問が残る。ユーザーのブランドに対する信頼感、企業の透明性など、今後の対応を誤れば取り返しがつかない事態に発展する可能性が高い。今年最大のスキャンダルになるかもしれないこの事件の原因を深掘りしてみよう。
EPAが指摘したのは違法なソフトウェアを組み込んだ「Defeat Device(ディフィート・デバイス=無効化機能)」の存在だ。このデバイスは、排ガス規制に適合させるためのシステムを試験のときだけ作動させ、普段は停止ないし作動を制限することを目的とする。Defeatとは「打ち負かす」という意味。欧米では反社会的行為として使用禁止が明文化されている。
そんな違法なソフトウェアを、なぜVWは使ったのだろうか。問題の背景には“世界で最も厳しいアメリカの排ガス規制”にありそうだ。現在の米・日・欧の排ガス規制の厳しさは同程度などといわれるが、実は窒素酸化物(NOx)の規制値では、アメリカは日本より2倍も厳しい。さらに、アメリカでは使用開始後も長期にわたって排ガス性能が規制値をクリアしていることをモニターする義務まである。
ディーゼル技術者にとっては軽油の品質も悩みの種だ。というのも、NOx吸蔵触媒に使われる白金(プラチナ)は軽油に含まれる硫黄(サルファ)によって被毒するからだ。さらにセタン価も低い。セタン価とはガソリンのオクタン価と同等の意味を持つ。セタン価が低いと、ディーゼル特有のノッキングが発生しやすく、排ガス性能に影響する。ちなみに日本では2007年頃から世界で最もクリーンな軽油が提供されるようになった。