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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

老害化した天才経営者・鈴木セブン&アイ会長、なぜ退任に?一介の雇われ経営者の末路

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

 幹部人事についても迷走し始めていた。鈴木氏の次男・鈴木康弘執行役員(51歳)がセブン&アイHD取締役になったことについて、15年4月18日付本連載記事『セブン&アイ、鈴木会長の“逸脱”行為 次男が取締役就任、世襲のような人事の違和感』で次のように疑問を呈していた。

「セブン&アイ・グループのように売り上げ規模10兆円を超える大企業で、世襲のような役員就任があるのは極めて珍しい。オーナー企業や創業家が存在する企業であれば、経営者の係累が役員になるのは珍しくないし、受け入れられることだろう」

 今年に入ると、年明けの1月8日にはイトーヨーカ堂社長だった戸井和久氏(61歳)が鈴木氏に辞表をたたきつけている。戸井氏は昨年社長に就任したばかりで、GMS部門を立て直すエースとして囑望された経営者だ。同氏は鈴木会長からの要求、叱責があまりに熾烈だというので耐えられなくなったとされる。

経営者と資本家の関係

 今回、井阪氏の更迭案について創業者でもある伊藤氏が、「イトーヨーカ堂の社長に続いて、今度はセブン-イレブンの社長を外に出してしまうのか」と思ったとしても無理がない成り行きだったろう。しかも、セブン-イレブン事業は伊阪氏の指揮の下、5年連続で増収増益を達成している。これでは、伊藤氏どころか2人の外部委員がいる指名・報酬委員会でも支持される役員案とはならなかった。

 鈴木氏は委員会で支持されなかった更迭案をあえて4月7日の取締役会に提出したが、無記名投票により承認されることはなかった。ここでも社外取締役が見識を示して影響力を発揮した。事ここに至って、無理筋を追おうとした鈴木氏は自らが退任するという事態に追い込まれたのである。

 30年以上にわたってセブン&アイ・グループで強権をほしいままにして天皇経営者となり、そしてそのまま老境に入ってしまい最後でバランス感覚を失ってしまったとしかいいようがない。

 私は、鈴木氏は稀有な経営者だと思っている。その実績・功績は流通業界において比肩できる者はいない。平成の大経営者の一人として、高く評価している。

 しかし今回の鈴木氏退任劇でつくづく感じたのは、経営者と資本家の関係だ。伊藤氏が保有する株式の数は、持ち株会社のものも含めるとセブン&アイHDの9.66%(2月29日現在)に上る。筆頭株主である。鈴木氏の名前はセブン&アイHDの上位株主リストに見当たらない。鈴木会長がいかなる功労者、大経営者、グループの総帥だったとしても、株主資本主義の会社では「一介の雇われ経営者」にすぎない。

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23:30更新
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