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村澤典知「時事奔流 経営とマーケティングのこれから」

小林幸子、なぜ奇跡の復活劇?自らデジタルを核に「変化」し、新たな顧客を獲得

文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング 執行役員
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 また、『紅白』で熱唱した曲『千本桜』は、11年に黒うさPが音声ソフト「初音ミク」を使用してネット上で公開したボーカロイドの曲でもあった。通常、プロの歌手であれば、それも大物になればなるほど、自分の歌を素材として扱われ、他の曲を歌うことに抵抗がありそうだが、小林はそうではない。「ベテラン歌手だから……」というようなこだわりはなく、それを楽しんでくれるお客さんがいるかどうかといったカスタマーセントリック(顧客中心主義)な考え方で、歌う場所や手法を問わず、メジャーシーンとインディペンデントなシーンをなんの垣根もないかのように自由自在に行き来している。昨年の『紅白』での圧倒的なツイート数も、表のTVの世界と、裏にあるニコ動などネット上のファンの世界の垣根を越えてつなげたからこそ実現できた、“ラスボスの必殺技”だろう。

 生物学者チャールズ・ダーウィンが、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」と言っているように、小林は50年もの演歌歌手としてのキャリアがありながらも、変化することで新たな顧客を獲得するとともに、演歌界のパイオニアとしての確たるポジションの獲得に成功した。

「顧客のいる場に自ら赴く」「コンテクストに合わせて価値をチューニングする」「顧客起点で垣根を越える」――。どれも、「言うはやすし行うはかたし」ではあるが、デジタル化への対応、もしくは若年層獲得が喫緊の課題である企業にとっては、ラスボス小林の戦い方は参考になる点があるのではないだろうか。
(文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング 執行役員)

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●村澤典知
インテグレート執行役員、itgコンサルティング執行役員。一橋大学経済学部卒。トヨタ自動車のグローバル調達本部では、調達コスト削減の推進・実行を中心に、新興国市場での調達基盤の構築、大手サプライヤの収益改善の支援に従事。博報堂コンサルティングでは、消費財・教育・通販・ハイテク・インフラなどのクライアントを担当し、全社戦略、中長期戦略、マーケティング改革、新規事業開発、新商品開発の導入等のプロジェクトに従事。A.T.カーニーでは、消費財・外食・自動車・総合商社・不動産・製薬業界などの日本を代表する企業のグローバル成長戦略、中期経営計画、マーケティング改革(特にデジタル領域)、M&A、組織デザイン、コスト構造改革等のプロジェクトに従事。2014年より現職。大手メーカーや小売、メディア企業に対し、データ利活用による成長戦略やオムニチャネル化、新規事業開発に関する戦略策定から実行までの支援を実施。

・株式会社インテグレート http://www.itgr.co.jp/

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