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“絶望の高原”を乗り切るためには?──『絶望読書』著者・頭木弘樹インタビュー

構成=清田隆之

──昨今は文学部不要論が盛り上がるなど、「文学は役立たない」という風潮もありますが……。

頭木:平和なときはそれでもいいかもしれませんが、いざ大変なことが起こったときに力を発揮するのが文学です。文学というより芸術全般に言えることですが、例えばそれは崖に登っているときの“命綱”に近い。命綱って、登っているときは要らないものだけど、いざ落ちてしまうと、途端に「それしか頼るものがない」という切実な存在になりますよね。芸術もそれと同じだと思うわけです。ナチスの収容所に収監されていたユダヤ人の手記などを読んでみると、文学を読み、音楽を聴いて何とか生き長らえた人がたくさんいたことがわかります。こうやって聞くとちょっと贅沢な感じがして、「バイオリンを聴いてたって本当に大変だったの?」なんて感じる人もいるかもしれませんが、むしろ逆で、それがあったからこそ何とか生きていけたというのが実態です。

──芸術って、日常では“贅沢品”というイメージがありますもんね。

頭木:そうなんですよ。だからなかなかその切実さが伝わらない。でも、芸術作品に触れる習慣は健康な内から身につけておいたほうがいいと思います。本を読まないまま手元に置いておく“積ん読”とか、絵のことはわからなくても美術館通いをしてみるとか、そういったことは思いのほか大切です。例えば、どんな病院にも大抵大きな絵が飾ってありますよね。あれ、普段は気にも留めなかったとしても、病気になって深刻な状態で眺めてみると、突然「いい絵だな」「ここに絵があってよかった」という気持ちになったりするんです。そういう効果を経験的に知っているからこそ、病院もあの絵に予算をかけているのかもしれません。もっとも、病気になってからいきなり読書や絵画鑑賞を始めるのは難しいので、日頃からそういったものに触れておくことは大事だと思います。

古典文学を読んでも頭よくならない!

──部屋に未読の本が貯まると後ろめたい気持ちになっていましたが……積ん読もあながち無駄ではないということですね。

頭木:積ん読って“余力”だと思うんですよ。挫折したときに新しい本を探しに行くのは難しいと思いますが、手元に本や画集、CDが散らばっていれば、それらに手を伸ばすことができます。人って案外、倒れたときにたまたま手に握ったもので救われたりしますからね。

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