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赤字転落でも報酬約1億円増のベネッセ社長、増益でも6千万減のカルビー会長

文=編集部
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赤字転落でも報酬約1億円増のベネッセ社長、増益でも6千万減のカルビー会長の画像1“プロ経営者”の原田泳幸氏(YUTAKA/アフロ)

「プロ経営者」は、実績を数字で示さなければならない。結果を出せなければ、その地位を追われる。

 通信教育最大手、ベネッセホールディングスの原田泳幸会長兼社長は6月25日に退任し、福原賢一副社長が社長に昇格した。同社の2016年3月期連結決算の最終損益は、82億円赤字となった。2期連続の赤字で、17年3月期の純利益はゼロの見通しだ。

 原田氏は業績のV字回復を果たせなかった。原田氏本人は「経営トップとして責任を取った」と言うが、実は創業家出身の福武總一郎最高顧問が、自ら招聘した原田氏を切ったといわれている。

 原田氏は「プロ経営者」と呼ばれており、日本マクドナルドホールディングスを経営再建したことになっている。福武氏に請われて14年6月にベネッセの社長に就任したが、就任直後の7月に2895万件の個人情報が流出した。

「事件のインパクトは思ったより大きかった」。原田氏は退任会見でこう語っている。主力の通信教育講座「進研ゼミ」の会員数の減少に歯止めがかからなかった。12年4月まで会員数は400万人程度で推移していたが、教材のデジタル化が進み、その翌年から年間20万人ペースで減り始めた。

 福武氏はデジタル化に対応するために原田氏を社長に据えたが、その就任直後に個人情報の流出が発覚。信頼回復と体制の立て直しを図ったが、主力の通信教育講座の会員数は戻らず、16年4月には243万人にまで減少した。

 ベネッセは6月25日、岡山市内で株主総会を開いたが、同日付で社長を退いた原田氏は姿を見せなかった。

 原田氏は15年3月期決算で1億4200万円の役員報酬を得ていた。16年3月期は2億3400万円。2期連続の赤字にもかかわらず9200万円もの大幅なアップに不満を示す株主は多く、株主総会で「お手盛りではないか」などとブーイングを浴びせられて役員報酬の一部返還を求められることが確実視されていた。そのため、それを避けるために欠席したとみる向きも多い。

LIXILの藤森義明氏の役員報酬は2億2400万円

 LIXILグループは、6月15日に開いた株主総会で藤森義明社長が相談役に退き、工具通販大手のMonotaRO会長の瀬戸欣哉氏が社長に就いた。

 11年に社長に就任した藤森氏は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)出身の「プロ経営者」として注目を集めた。しかし、買収した独グローエ傘下の中国ジョウユウの不正会計を見抜けなかった。昨年、ジョウユウの不正会計が発覚し、累計660億円の特別損失を計上した。16年3月期の最終損益は266億円赤字となり、6年ぶりに赤字に転落した。

 藤森氏もプロ経営者として結果を出せなかった。そのため、LIXIL前身のトステムの創業者一族、潮田洋一郎取締役会議長にバッサリと切られた。藤森氏を三顧の礼で迎えたのは潮田氏だったが、プロ経営者は数字がすべてである。

 藤森氏の16年3月期の役員報酬は5億2400万円で、そのうち業績連動報酬が3億円あった。つまり、15年3月期の3億1200万円から2億1200万円の大幅なアップになる。

 ところが、有価証券報告書には、「業績連動報酬は中長期(2015年4月~18年3月)の業績連動報酬に係わる役員賞与引当金の繰入額であり、支払いは行われておりません。なお、平成27(2015)年度の短期業績連動報酬は0円であります」と記載されている。18年3月期の決算が確定してから業績連動報酬の額は支払われることになる。赤字経営が続けば、業績連動報酬はなくなる可能性もある。それでも2億2400万円の役員報酬を得ており、前期より上がっている。

 原田氏も藤森氏も、赤字経営に陥りながら2億円超の役員報酬を手にしたことになる。普通の役員なら、これだけ赤字を出せばゼロ査定だが、結果を出せなくてもプロ経営者はしっかり報酬をもらうということらしい。

 さらに不可解なことがある。ソニーは社外取締役に原田氏を続投させるという。6月17日に開いた株主総会で社外取締役として再任したのだ。また、武田薬品工業は6月29日に開いた株主総会で藤森氏を社外取締役に迎えた。

 捨てる神あれば、拾う神あり。落日を迎えたプロ経営者のブランド価値は、まだあるということなのか。一部に信奉者がいるのかもしれない。

資生堂の魚谷雅彦社長の役員報酬は1億1900万円

 資生堂の魚谷雅彦社長の15年12月期の役員報酬は1億1900万円。これは決算期変更に伴う15年4月から12月までの9カ月分の報酬だ。

 15年3月期の1年間の役員報酬は6300万円だったから、大幅にアップした。役員賞与が600万円から4600万円に4000万円増えた。業績を回復させ、結果を出したからである。

 魚谷氏は外資系企業を渡り歩き、日本コカ・コーラの社長などを歴任したプロ経営者だ。資生堂の前田新造会長兼社長(当時)から「資生堂のブランドを再生してほしい」との要請を受けて、14年4月社長に就任した。

 それから2年。15年12月期連結決算(9カ月決算)の純利益は232億円。従来予想の130億円を100億円超上回った。インバウンド(訪日旅行客)消費の神風が吹き、特に中国人観光客の化粧品の爆買いで高価格帯のブランド化粧品が売れた。爆買いがピークを過ぎた今期以降が魚谷氏の正念場となる。資生堂のブランド再生が数字となって表れるかどうかにかかっている。

カルビー、7期連続増益でも役員報酬は減額

 カルビーの松本晃会長兼最高経営責任者(CEO)は、増益という結果を出し続けてきた。医療機器世界最大手、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(現J&J)の日本法人社長を務めたプロ経営者である。カルビー創業家の松尾雅彦氏の招きで、09年6月に会長兼CEOに就いた。同社は、ここから増益街道をひた走ることになった。

 カルビーの16年3月期の連結決算の営業利益は281億円。7期連続の増益である。だが、連結営業利益は、会社が計画した数字(288億円)に7億円届かなかった。

 松本氏は常々、会社が公表した数字は「投資家への公約」と述べている。未達の結果責任を取り、役員賞与を減額し、業績連動型株式報酬を支給しなかった。その結果、松本氏自身の役員報酬は1億400万円。15年3月期の1億6900万円から6500万円のダウンだ。

 松本氏は社員にコミットメント(必達目標)とアカウンタビリティ(結果責任)を強く求めており、自分に対しても厳しい。コミットメントが未達だったため、自らにペナルティを科したのだ。ほかのプロ経営者とは意識がまるで違う。この役員報酬には、松本氏の経営の神髄がはっきりと映し出されている。
(文=編集部)

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