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「正社員になれない」「希望職種につけない」が当然化…実感なき「雇用情勢の好転」

文=寺尾淳/ジャーナリスト
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 資格も経験も問われない求人を探すなら、事務的職業以外では「販売の職業」「サービスの職業」「生産工程の職業」あたりになるが、小売店の販売員、外勤の営業職、介護などサービス職種、工場勤務などは、「接客は自分に向いていない」「土日は休みたい」「工場の生産ラインの仕事はイヤだ」などと敬遠されることが少なくない。そのため、結果的に一般事務に人気が集中してしまう傾向が見て取れる。

 あくまでも単純計算だが、7月の「一般職業紹介状況」の正社員の有効求人倍率に一般事務の有効求人倍率を掛け算すると、0.88×0.25=0.22で、「一般事務の正社員」の希望がかなう可能性は22%しかない。

 そのように「つきたい仕事」の希望と募集している仕事のギャップが激しいから、学校はすでに卒業してしまい、これといった資格がなく経験も乏しい若い人の間では、ニュースで「雇用情勢は好転している」といくら伝えられようと、その実感は乏しいのだろう。

「オランダモデル」には可能性もあるが、限界もある

「正社員になれない」状況の打開策として注目を浴びてきたものに、「オランダモデル」がある。これはオランダが実施して「成功した」といわれている雇用改革である。

 簡単にいえば、「同一価値労働・同一賃金」のルール化で、オランダ政府は1996年、フルタイムでもパートタイムでも、労働の中身が同じなら誰もに同額の賃金を支払うように労働法を改正した。2000年には労働時間調整法を制定して、労働者が希望すればフルタイムとパートの間で自由に乗り換えることができ、労働時間も労働者が決められるようにした。年金など社会保険の取り扱いも、フルタイムとパートの差をなくしている。

 この「パートの待遇のフルタイム化」で、オランダでは失業率が01年に2.4%まで低下するという効果があがった。同年のパートタイムの比率は33%で、働く人の3分の1にまで高まっている。

 日本流にいえば、正社員とパートで労働条件の違いがなければ、雇用市場では「パートでもかまわない」と思う人が増えて正社員志向が和らぎ、その分、雇用機会が増えて失業率が低下していく。安倍内閣の労働政策も、「ワークライフバランス」「ワークシェアリング」のお手本としてオランダモデルを見習っている部分が多分にあり、それは今盛んにいわれている「働き方改革」にもつながっている。
 
 しかし、オランダモデルは日本の労働環境、雇用環境を改善する可能性を秘めている反面、限界もある。それは「同一価値労働・同一賃金」という原則の部分に潜んでおり、「企業の生産性を低下させる恐れがある」という懸念が指摘されている。

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