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午堂登紀雄「Drivin’ Your Life」

奨学金滞納・給食費未納・就職失敗の人の「自己責任」を問うのは、間違っているのか

文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役
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「自己責任」

 では、ほかに何が違うのか。そう考えたとき、アメリカの象徴的な価値観のひとつに「自由主義」が思い浮かびます。

 しかし「自由」を裏返せば、「自己責任」です。つまり、「好きにしていいよ。でも、どうなってもそれは本人の責任だよ」というわけです。逆に「好きにしていいよ。その責任は誰かが取ってくれるよ」とはならないでしょう。

 給食費未納問題も、奨学金滞納問題も、基本的には本人の判断と選択による結果です。

 親も学校に給食があり、給食費を払う必要があることを知っていて子どもを学校に通わせているでしょう。給食費を払いたくないなら、最初から給食がない学校へ行かせればいいだけのはずです。
 
 奨学金も、返済できない収入の職業を選んだのは自分であり、誰かに強制されたわけではない。就職ができないというのも、ではなぜ同じ学校・同じ学部に通った同級生は内定を勝ち取れたのか。自己分析が曖昧なまま就職活動をしたか、学生時代に自己の鍛錬を怠ったか、何か理由があるはずですが、でもそういう生活を選んできたのはほかでもない自分自身。

 私自身も就職が決まらず大学卒業後はしばらくフリーターをしていましたが、就職活動に出遅れ真面目に取り組まなかったからなので、やはり結果には原因があるということです。ギャンブル依存症も、そのギャンブルにお金を使っているのは本人であり、強要されているわけではない。つまり、いずれも本来は自己責任のはずです。

 しかし、日本のメディアや世論も、個人に対し「もっと努力したほうがいい」「頭を使え」とは決して言いません。そのほうが、大衆に受け入れられやすいからです。貧困や格差の問題も、「個人が努力しろ」とでも言おうものなら、炎上するからでしょう。

 そのため、奨学金が返済できないのは貸す側の問題だ、奨学金という名称がまぎらわしい、給食費は無償化すべき、貧困や格差は社会の構造がおかしい、などと責任の所在を個人ではなく外部に求め、他人に責任転嫁しようとして、解決方法には向かわない。

 そして行政もそんな批判を恐れる。そのため、FXのレバレッジを25倍(個人)までに規制する。社会から「政府は無策」「責任を取れ」と糾弾されるのが怖いからです。でも、FXにお金を出し、無謀なタイミングで無謀なポジションを張ったのは本人自身なのに。

 生卵による食中毒事故のほうが圧倒的に多いけれども、それは禁止されずユッケの提供が禁止される。しかし、生肉は(病原菌や寄生虫などの問題があるため)本来は食べてはいけないとか、抵抗力の弱い子どもには生ものは控えるべしという昔ながらの教訓はかき消される。

午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役

午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役

 1971年、岡山県瀬戸内市牛窓町生まれ。岡山県立岡山城東高等学校(第1期生)、中央大学経済学部国際経済学科卒。米国公認会計士。
 東京都内の会計事務所、コンビニエンスストアのミニストップ本部を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして勤務。
 2006年、不動産仲介を手掛ける株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。2008年、ビジネスパーソンを対象に、「話す」声をつくるためのボイストレーニングスクール「ビジヴォ」を秋葉原に開校。2015年に株式会社エデュビジョンとして法人化。不動産コンサルティングや教育関連事業などを手掛けつつ、個人投資家、ビジネス書作家、講演家としても活動している。

Twitter:@tokiogodo

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