奨学金滞納・給食費未納・就職失敗の人の「自己責任」を問うのは、間違っているのか
給食費未納問題に端を発し、給食費を無償化しろという意見が出ています。奨学金の返還が困難な人が増えているという問題に端を発し、「奨学金という名の学生ローンだ」「給付型にしろ」などという意見が出ています。昨年12月に成立した「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」、いわゆるカジノ法案に対し、「ギャンブル依存症が増えたらどうするんだ」という意見が出ています。
この問題を、「なぜ日本からアップルのような企業が出てこないのか」という問いから考えたいと思います。
といいながら、これはそもそも問いの立て方が間違っていて、別に日本に限らず、イギリスからもドイツからもフランスからも、世界的なイノベーター企業や起業家が出てくる頻度は高くありません。社会福祉が手厚いといわれるスウェーデンなどの北欧諸国、創造的な学校教育が行われているといわれるフィンランドからも、それほどたくさん出ているわけではありません。
もちろんいるにはいます。しかし、グーグル、アマゾン、フェイスブック、テスラモーターズ、ペイパルなどといった、「人々の利便性やライフスタイルを大幅に改善し、二度と元には戻れなくなるようなもの」を生み出して「世界を席巻する」ような企業が「続々と」生まれている、というわけではありません。
つまり本来は、「なぜアメリカだけから、アップルのような企業が出てくるのか」「なぜアメリカだけから、スティーブ・ジョブズ氏のような起業家が生まれるのか」という問いを立てるほうが、より考えやすいでしょう。
実際、マーク・ザッカーバーグ氏やジェフ・ベゾス氏のようなアメリカ生まれのアメリカ人だけでなく、たとえばグーグル創業者のセルゲイ・ブリン氏はロシアから移住、ペイパル創業者のピーター・ティール氏はドイツから移住、同じくペイパル創業者でテスラモーターズやスペースXを率いるイーロン・マスク氏は、南アフリカからアメリカに移住して起業しています。
ロシアや南アフリカにいてはできなかった(かもしれない)ことが、アメリカならできる(可能性が高まる)ということでしょう。
もちろん、ベンチャー企業やアーリーステージのビジネスに投資する市場の分厚さ、成熟度といった違いはありますが、それを個々人が嘆いても仕方がありません。