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現在、第3次M&A(合併・買収)ブームとの声が聞かれる。
日本企業による海外でのM&Aが拡大しているのだ。2016年度の買収額は、前年度より33.8%増え過去最高の11兆円弱に達した。国内市場が成熟するなか、先進国の企業を買収することによって新たな販路を開拓し、収益を確保する動きが目立つ。先端技術、通信や保険、食品など幅広い分野でM&Aが行われた。高い技術やブランド力に価値を見いだしている側面もある。
日本銀行の超金融緩和による低金利(マイナス金利策)で資金を調達しやすい環境が続いていることが、日本企業のM&Aの機運を高めている、との分析もある。
M&A助言会社、レコフの調べでは、日本企業による16年度の海外企業の買収額は10兆9127億円と、3年連続で過去最高を更新した。件数も627件(前年度比5.7%増)で、過去最多となった。
買収金額のトップはソフトバンクグループによる英半導体設計会社、アームホールディングスの買収で約3兆3000億円。全体のおよそ3分の1を占めた。日本企業による海外企業の買収で過去最大である。
アサヒグループホールディングスは、東欧のビール事業を約8900億円で買収。キリンホールディングスやサントリーホールディングスに出遅れている海外展開を加速する。
SOMPOホールディングス(旧損保ジャパン日本興亜ホールディングス)による米保険会社買収(約6400億円)、武田薬品工業の米製薬会社買収(約6300億円)など、大型案件が相次いだ。
一方で教訓もある。06年の米ウエスチングハウス買収が、東芝解体劇の序章になったように、M&Aは中長期的に見て、必ずしもプラス材料になるとは限らない。それだけに怖さを伴う。
M&Aは売り手が絶対に有利
拙著『海外大型M&A大失敗の内幕』(さくら舎)のあとがきでも触れたが、M&Aでは買い手に高いリスクが伴う。
インドの後発薬メーカー、ランバクシー・ラボラトリーズの創業家一族のマルビンダル・シン、シビンダル・シンの兄弟は、第一三共に4883億円の超高値で自分の会社を売り払い、大富豪になった。今ではインドの「病院王」と呼ばれている。第一三共は09年3月期に3540億円の減損処理を行った。
日本企業の経営者は「会社を売って儲けた」という成功体験がない。中身はボロボロなのに、表面だけを繕い、厚化粧した会社を買わされて臍(ほぞ)を噛む原因になっている。
売れ残っていた米国の保険会社が次々と日本企業の傘下に入ったが、これは日本の保険会社が、米国の著名な投資銀行の餌食になったといえる。彼等にとって日本の金融会社はカモだったのである。
海外M&Aに潜む罠として、「のれん」代がある。大型買収ののれん代は非常に大きく、買収した側の業績に重くのしかかる。今は東芝や楽天がのれん代の重荷に喘いでいる。