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鈴木貴博「経済を読む目玉」

超便利でいいことずくめの食器洗い乾燥機、なぜ売れない?誤解だらけのデメリット

文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

 ちなみに皿洗いの担当が私になった理由は、妻が水アレルギーで水によって極度の肌荒れが起きるためだった。だから同様の症状にお悩みのご家庭では、食洗機の導入でその悩みも消えるだろう。

 まとめてみると、導入することで時間は節約できる。水道代も同様に節約できる。洗剤もそれほどお金がかかるわけではない。いいことずくめなのに、なぜか導入が進まないのがこの食洗機の不思議なのである。

普及が進まない理由

 では次に、普及が進まない理由を上げていこう。昔多かった理由は「汚れが落ちない」というものだった。1970年代など特にそうだったらしいのだが、アメリカから食洗機を輸入して設置すると、ごはんの汚れが落ちないとよくいわれた。皿や茶碗にお米がこびりついたまま乾燥されて、逆に不潔に感じるというものがあった。

 しかし今は違う。今どころか30年前にはすでにこの不満については製品改良で解決済みで、お米の汚れもかなりひどい汚れもきれいに落ちるのだ。ただ、食べ残しをそのまま皿に乗せたまま洗うのはおすすめしない。さっと水で流してから食洗機に設置するほうが機械を長くきれいに使うことができる。これは念のために指摘しておく。

 2番目によく出てくる意見は、「設置工事が必要な家電は売りにくいのではないか?」というものだ、確かに冷蔵庫のように家に届いたらコンセントにつなぐだけでよい家電とは少々事情が違う。洗濯機のようにそもそも家のなかに設置場所がつくられていて、蛇口や配水管にそのままつなげるようにできているわけでもない。

 そもそも、新しい工事をしないと設置できないから、購入のハードルが高いのではないかという意見だ。でも、考えてみるとクーラーも同じくらい設置工事は面倒だが、90%以上の家庭に普及している。後発の家電で同様の工事が必要な温水洗浄便座だって、食洗機以上に売れている。

 実は、ここに一つヒントがある。クーラーも温水洗浄便座も消費者は購入前に一度どこか別の場所で体験したはずだ。それで便利さがわかって「いつか買いたいな」という話になる。

 ところが食洗機の場合、自分が別の場所で便利さを体験する機会はほとんどない。ママ友の家に集まったときに自分が食器洗い担当になって、そこの家にある食洗機を使うことで「便利ね!」と気づくなどという経験は意外とレアなケースであろう。

 海外旅行の際にコンドミニアムに泊まって、そこで食洗機の便利さを経験することでユーザーになるという人もいるかもしれないが、それも人数的には多くはないだろう(ちなみに私はこのルートでユーザーになった)。

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『日本経済復活の書』『日本経済予言の書』(PHP研究所)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)、『仕事消滅』(講談社)などがある。
百年コンサルティング 代表 鈴木貴博公式ページ

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