森ビルvs.森トラスト

 数多く発表された銀座のホテル計画で、もっとも注目を浴びているのは森トラストが手掛ける「東京エディション銀座」だ。客室数は80と少ないが、同ホテルは世界に名だたるホテルチェーン「マリオット・インターナショナル」に運営を委託。マリオットの最上級ホテルという触れ込みだけあって期待は大きい。

 マリオットは銀座と同時に虎ノ門にもエディションを開業させる予定にしている。近年、虎ノ門は開発を手掛ける森ビルの牙城エリアになっている。それだけに、虎ノ門に森トラスト擁するマリオットが殴り込みをかけるかたちになり、業界内では森ビルvs.森トラストの大戦争が勃発するとも囁かれている。

 森ビルと森トラストは、もともと同系列企業だったが、創業者・森泰吉郎氏の死去後に方針の違いから分裂。その後、2社は東京の不動産事業・土地開発で覇を競ってきた。森トラスト関係者は「森ビルとは特に険悪な関係ではない」と言うが、お互いに意識していることは間違いない。

 森ビルと森トラストが対抗心を露わにする引き金になったのは、銀座松坂屋跡地に鳴り物入りでオープンした「GINZA SIX」だったといわれる。「GINZA SIX」は森ビルが銀座進出を果たした悲願のプロジェクトだった。松坂屋跡地を巨大ショッピングモールに再開発するだけではなく、バス乗り場を整備するなど交通の結節点としての機能も併せ持つ。

「『GINZA SIX』だけではなく、虎ノ門ヒルズにもバスターミナルを整備します。さらに、ヒルズに併設するかたちで日比谷線新駅を開業させます。今後、森ビルは交通分野にも進出します。交通を掌握することで、都市開発事業者のメインプレイヤーになれるのです」(森ビル関係者)

 GINZA SIXにはホテルのような宿泊施設はないものの、黒船・森ビルの襲来は大きな脅威に違いない。

 そうした森ビルの攻勢に、森トラスト関係者が面白く感じていないのは明らかだ。森トラストが反転攻勢に出る号砲となったのが、今回発表された「東京エディション銀座」だった。

 森ビルの銀座進出に警戒感を強めているのは、森トラストばかりではない。「日本橋の雄」三井不動産、「丸の内の大地主」を自負する三菱地所、そのほか有楽町に不動産を有する朝日新聞社や読売新聞社といった名だたる老舗も銀座のホテル戦争に参入を表明。森ビルの独走を黙って眺めるつもりはないようだ。

 銀座で過熱するホテル大戦争の決着がつくのは2020年の東京五輪後だろう。果たして、そのときに笑う勝者は誰なのか。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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