韓国、アイルランドなどで供託金違憲判決
実は、過去にも供託金の違憲性を問う訴訟が複数提起されているが、1999年に「供託金合憲」の最高裁判断が2つ出ている。しかし最高裁は、合憲と判断した理由をまったく示していない。そのため本件の原告は、「判例としての先例性はない」と主張している。
裁判の重要なポイントのひとつは、最高裁が合憲と判断した99年以降、供託金が社会にそぐわないと示すような社会情勢や経済情勢に変化があったかどうかだ。
この点に関して原告側は、主に3つ主張している。
(1)合憲判断の年以降、物価はほとんど変わらないなかで、貧困が拡大し大きな変化があった。
(2)韓国やアイルランドで、供託金が違憲であるとの判断が下されている。
(3)国会でも高額供託金の違憲性が指摘され、09年7月9日、衆議院で供託金の引き下げを含む「公職選挙法の一部を改正する法律案」が成立した。(だが、衆院解散のため参院では採決されずに廃案となった)。
01年に韓国では、供託金が違憲であるとの判決が出たことを受けて選挙法を改正し、供託金を従来の2000万ウォン(当時約200万円)から1500万ウォン(同約150万円)に引き下げている。これについては、原告側が文書を示してきた。
1月10日の口頭弁論では、韓国と同じ01年にアイルランドでも供託金違憲判決が出されて供託金が廃止された事実を原告側が陳述しているので、その内容を見てみよう。
アイルランド下院議員選挙と欧州議会議員選挙において、供託金を支払えずに立候補できなかった男性が国を訴えた裁判で、アイルランド高等法院は01年7月31日、供託金納付を義務付けた選挙法は違憲とする判決を下した。
下院選300アイルランドポンド(約5万円)、欧州議会議員選1000アイルランドポンド(約17万円)の供託金が憲法違反だと明示されたのである。日本の選挙区300万円、比例代表区一人600万円よりはるかに低い金額でも違憲とされたのだ。
アイルランド憲法41条では「すべての市民は、人間として法の前に平等とみなされているものとする」と謳われ、16条1項では「21歳になった市民であって、この憲法又は法律により欠格又は無能力とされていないすべての者は、性別の如何に関わらず、下院議員となる資格を有する」ともされている。