判決では、当時のアイルランド選挙法が、これらの憲法条項に違反していると指摘されている。この点について、原告側の弁護団長である宇都宮健児弁護士はこう言う。

「アイルランドの憲法は、日本国憲法14条(法の下の平等)と同じように一般的な平等権規定になっています。さらに日本国憲法44条の但し書きには、国政選挙の立候補資格について、より明確に『財産・収入によって差別してはならない』と定められているのです。したがって、日本ではより厳密に立候補に対する平等が認められるべきです」

貧困化を示す数値は「社会変化の一面のみ」と断ずる被告「国」の“常識”

 さらに、日本の最高裁供託金合憲の判断が下されて以降、貧困化が進んだことで供託金が立候補の権利を阻んでいる事情を示す書面を、原告は提出している。その一部を列挙してみよう。

 まず、合憲判断の99年から原告の近藤氏が立候補しようとした14年までに物価はほとんど変化していないことを前提として、次のような事実が挙げられた。

・厚生労働省の調査では、平均所得626万円から541.9万円へと約14%減少した
・所得中央値(所得順に国民を並べたとき、真ん中になる人の所得)は506万円から427万円へと約16%減少した
・厚労省の生活意識調査によると、「生活が苦しい」と答えた人は50.7%から62.4%へと11.7ポイント増加した
・金融広報中央委員会調査で、金融資産ゼロ世帯は12.1%から30.4%へと18.3ポイント増加した
・税引後年収300万円未満世帯は、10.2%から20.0%へと約2倍に増加した
・生活保護世帯は、75万1303世帯・107万2241人(00年度)から161万2340世帯・216万5895人へと2倍以上に増えた

 惨憺たる日本の貧困状況を表す調査結果である。こうした状態に鑑みると、高額供託金は低所得者にはますます重くなっており、政治への志を持ったとしても立候補は無理だ。

 この指摘に対し、被告の国は次のように反論しているのが実に興味深い。

「これらの数値は、社会情勢、経済情勢の変化の一面を捉えたものにすぎない」(被告準備書面2)

「一面にすぎない」どころか、先に列挙した貧困拡大こそ日本が抱える最大の問題ではないだろうか。この調子だと、飢えている人に向かって「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」と言わんばかりの政治が続くのは必至だろう。

 このような準備書面を書いた被告の「指定代理人」について、ひとこと説明しておこう。

 一般人が国や地方自治体を相手に訴訟を起こすときは、代理人として弁護士と契約を結び経費もかかる。

 一方、被告の国や自治体側は、「指定代理人」と呼ばれる職員が代理人を務めるが、彼らは税金で生活し、訴訟関連の費用はすべて税金でまかなわれる。裁判が長期化すれば民間人である原告は経済的にも疲弊するが、被告側は痛くもかゆくもない。

 次回、第7回口頭弁論は、4月13日14時から東京地裁103号法廷で行われる。
(文=林克明/ジャーナリスト)

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