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40代になっても低賃金…誰が「絶望の就職氷河期世代」を生んだのか?

文=小林拓矢/フリーライター
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 企業が正社員での採用を抑制するなかで、派遣業の拡大を法的に認め、低賃金労働者を増やそうとする政策を導入していった。不況だから、人は雇えない。しかし、人は必要。どうするか。低賃金で雇うしかない。でも、雇用の責任は負いたくない。だから派遣労働者を受け入れる。

 派遣労働者を増やすにはどうするか。世の中全体で正社員として雇う人を減らしたい。だから、新卒採用も中途採用も減らす。不況を理由に、採用を行わない企業は多かった。公務員の世界でも、非正規雇用が増えていった。教員免許を持っているが教員採用試験に受からなかった人を臨時に採用し、教科を教えるだけではなく正規の教員とほぼ同等の仕事をさせた。

不景気を促進させた日本の政治

 1996年に首相に就任した橋本龍太郎氏は、財政再建路線を打ち出し、行政改革も行った。そのため景気が減速し、北海道拓殖銀行や山一證券の破綻も起こった。そんななかで公共事業は削減されていき、長期の不況の原因ともなった。

 この不況を政治家は救おうとはしなかった。長期政権を担った小泉純一郎首相は、「聖域なき構造改革」を旗印に、「小さな政府」を推進した。これで、不況は固定化されることになった。景気回復が言われるようになっても、大きな回復はなく、給与の上昇はなくなっていった。もちろん、労働組合も弱体化が進んでいた。

 そんななかで、新自由主義を掲げる経済学者、竹中平蔵氏が重用され、内閣府特命担当大臣にまでなる。物価の下落とそれにともなう賃金の下落を主張し、低賃金路線は確定した。なお竹中氏は、パソナグループ取締役会長である。

進む分社化

 企業もコア業務は自社が担うも、それに付随する業務は子会社をつくってそこに移すなど、人件費抑制策を進めた。たとえば工場がある企業の場合、子会社が工場を運営し採用などは独自に行い、給与を削減する。ここに派遣労働者や請負労働者を入れることも多い。
 
 派遣会社も、大手企業の子会社である場合もある。大手企業では子会社に人材派遣会社を持ち、親会社に派遣社員を送り込む。事務作業を行う一般職を募集しない代わりに、こういった派遣会社に登録した人が会社で働くことも多くなってきた。最近では、一般職の採用も再び行われるようになり、氷河期世代だけが非正規雇用のスパイラルのなかに陥る状況になってしまった。

 不景気を理由に、低賃金労働者を増やすようにした。その動きは、政策的につくられたものだった。さまざまな手段を使って、氷河期世代を低賃金の状況のままでいるようにした。低賃金でいることが、企業にとってはありがたいのだ。

 現在、企業や官公庁で仕事を担う中堅の人材が足りないということが課題となっている。それは、当然のことだろう。中堅を担う人材を、そもそも育てていなかったのだから。
(文=小林拓矢/フリーライター)

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