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高橋篤史「経済禁忌録」

あのジャスダック上場「ハコ企業」に強制調査…蠢く怪しい人脈の全容解明か

文=高橋篤史/ジャーナリスト

リアルビジョン株をめぐる動き

 その年1月頃からソルガム社は取得したリアルビジョン株をカネに換えるべく水面下で譲渡先を探した。口利きをした一人は12年に大阪府警が摘発したセイクレストの架空増資事件で指南役を務めていた増資アレンジャー(現在72歳)だった。譲渡先に名乗り出たのは都内の経営コンサルティング会社で、同社の実質オーナーはこれまた弁護士法違反で10年に逮捕された札付きのコンサルタントだった。経営指導先に対し会社分割を悪用した債務逃れを指南していたのである。

 続く3月、経営コンサル会社は金融ブローカーの実質支配企業(前述の共和フィナンシャルの親会社)との間で「取り纏め依頼契約書」を交わした上でソルガム社との交渉に入っていった。リアルビジョン株約158万株の譲渡代金は約7億円とされた。もっともその時、札付きコンサルの手元には2億円しか余裕資金がなかった。もともとは名証セントレックスに上場するオプトロムが発行した新株予約権を行使するために調達したものだったが、転用することにしたのだ。

 問題は残り5億円である。それについては話し合いにより、別のブローカーが紹介してくれる第三者からの借り入れ2億円と、同時に用立ててくれる約束手形3億円を充当することに決まった。

 じつはこのブローカーもくせ者だ。その昔は大物仕手筋として知られた中江滋樹氏の運転手を務め、その後は借金の担保に預かった株を勝手に売り払ってしまうパクリ屋稼業でもっぱら生計を立てていた御仁なのである。融資金より担保株のほうが高額なため、すぐに売り払うことでサヤが抜けるわけだ。最近ではレンタルビデオ店チェーン、ゲオホールディングスの前会長が虎の子の保有株を取り戻せない羽目となっている。

 さて、くせ者ブローカーが用立ててくれた約束手形は川崎市内の会社が振り出したものだった。経営コンサル会社はそれに裏書きをしてソルガム社に株代金の一部として渡した。しかし、結局その手形は期日に不渡りとなり、裏切られたかたちの経営コンサル会社は決済資金を用意できずお手上げとなった。最終的には売り手のソルガム社が担保権を行使、経営コンサル会社は取得したばかりのリアルビジョン株のうち大半の113万株を没収されてしまう。

 この間、経営コンサル会社はくせ者ブローカーに紹介された東京・六本木の投資会社から月1割の高利で2億円を借りていたようだ。その投資会社を支配するのは若手経営者(現在44歳)で、人脈に旧ライブドアの元最高幹部らが連なっていた。それもあり投資会社は08年に旧ライブドアマーケティングの買収を仕掛けるなどしていた。一方で件の若手経営者らの人脈が関与した千葉県内の不振ゴルフ場の買収では、使途が定かでない多額の支出が発覚したことから依頼主との間でトラブルになったりもしている。

 結局、手形不渡り騒動を機にリアルビジョン株113万株はソルガム社から若手経営者率いる投資会社の関係会社へと渡ることとなる。14年7月のことだ。その後、リアルビジョンはRVHへと社名を変え、過払い金弁護士向けの広告会社や美容脱毛チェーンなど、やはり本業とはまったく関係のない買収を次々と進めていくこととなる。

不可解なM&A取引

 他方で若手経営者率いる投資会社はソルガム社との間で新たなM&A取引も行うが、そちらはとんでもない結果となった。15年2月、投資会社は関係先の結婚式・飲食会社「ウェディングドリーマーズ」を株式交換方式によりソルガム社に売却する。約5億5000万円相当のM&A取引だった。ところが、わずか1年後、ソルガム社は買収時に計上したのれんの全額など計5億7000万円もの損失計上に迫られたのである。ほとんど無価値の赤字会社を買収していたわけだ。

 ソルガム社による不可解なM&A取引はそれにとどまらない。昨年12月にはスーパーソルガム事業の強化と称して都内の運送会社「アズシステム」をやはり株式交換で買収したが、こちらもわずか3カ月後にのれんの全額6億円を損失計上しているのである。

 こうした間、ソルガム社の発行済み株式数は約3429万株(今年2月末時点)となり、例のN&Mマネージメントが筆頭株主となり経営混迷が始まる前の実質11倍超にも膨張した。一方で赤字経営は慢性化、今回の強制調査で焦点となっている17年3月期も引き続き営業キャッシュフローが赤字となったら上場廃止基準に抵触するところだった。

 公表されている有価証券報告書によると、ソルガム社は17年3月期に1億3300万円の営業キャッシュフローの黒字を計上している。が、それは期末ぎりぎりに不可解な代金支払いがあってのものだった。ソルガム社はスーパーソルガムをメキシコなど海外で大量に販売していたとするが、そのうちの代金11億円はメキシコ人と思しき外国人から3月30~31日に現金ではなく小切手で受領したものだったのである。その裏付けとなる原資はファンド事業によって日本の投資家から集めたものとの説明がなされたという。

 期末ぎりぎりでの小切手払いというのはいかにも不自然だが、しかも代金のうち1億3000万円は翌18年度の販売予定分を前倒しでもらい受けるという一瞬信じがたい気前のいい話だった。おそらく証券監視委は今後そのあたりの実態を解明していくものと思われる。それもあり、ソルガム社の前受け金は前の期に比べ約9億5000万円も増加、これが直接的には営業キャッシュフローを黒字に押し上げた。当局による解明次第では上場廃止の可能性も浮上してくるだろう。ハコ企業もようやく年貢の納め時のようだ。
(文=高橋篤史/ジャーナリスト)

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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