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高杉康成「コンセプト・シナジーな経営戦略」

なぜ3Dプリンター市場は急拡大したのか?「ホワイトオーシャン」という新たな概念

文=高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士
なぜ3Dプリンター市場は急拡大したのか?「ホワイトオーシャン」という新たな概念の画像1「Gettyimages」より

 ホワイトオーシャンという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。ブルーオーシャンという言葉は、ビジネスに携わっている人であれば1回ぐらいは聞いたことがあるでしょう。ブルーオーシャン戦略とは、欧州の学者が提唱した戦略論の話で、競争の激しい市場を「レッドオーシャン」、競争のない未開拓の市場を「ブルーオーシャン」として、この後者を狙う戦略をブルーオーシャン戦略と呼んでいます。

 ビジネスパーソンなら気づくと思いますが、この学者の定義する「競争のない未開拓の市場」というのは、実際に狙うべき市場なのでしょうか。競争のまったくない市場はビジネス的に魅力があるのでしょうか。

「あなたはこれから靴を販売していきます。靴をまったく履いていない人たちの市場と、靴をすでに履いている人たちの市場のどちらを狙いますか」

 就職面接などでときどき出てくる質問ですが、あなたならどちらを狙いますか。おそらく「靴をまったく履いていない人たちの市場を狙います。未開拓なので非常に多くの顧客をターゲットとすることができます」と答えるでしょう。これがまさに、ブルーオーシャン戦略の考え方そのものです。

 しかしながら、深く考えてみると1つの疑問が湧いてきます。そもそも、靴をまったく履いていない人の市場というのは、靴がいらないから履いていない可能性もあるのです。もし靴としての機能が本当に必要なら、靴ではなく靴下を履くというような類似方法、あるいは足が痛くないようにカーペットの類いを敷く、道路の舗装を変えるなどの代替方法を採用しているでしょう。つまり、これらの類似方法、代替方法(以下、合わせて現状方法という)も含めた競争のまったくない市場というのは、見方を変えればニーズそのものがない市場という可能性もあるのです。

 こう見ていくと、ブルーオーシャンとレッドオーシャンという見方だけでは不十分だと思います。そこで、新たな考え方として「ホワイトオーシャン」という市場観が出てきたのです。ホワイトオーシャンとは、現状方法とは競争する状態にはあるが、これがなんらかの要因で限界を迎え、市場トレンドの変化を伴って新たに発生する市場ととらえることにします。市場環境の変化から生まれる新しい市場であるため、それがどういった色に染まっていくかは、参入企業、市場の成長性などによって変わっていきます。このホワイトオーシャンの具体例を、3Dプリンターの市場拡大事例を見ながら考えていきましょう。

真の成長市場を見つけ出す入口

 3Dプリンターとは、3次元に造形できるプリンターのことで、材料に樹脂や金属を用いて、立体的な造形物をつくることができる装置です。2016年現在、市場規模は約120億円といわれています。これも一度ぐらいは見たり聞いたりしたことがあるでしょう。従って3Dプリンターの説明はこれぐらいにして、本題に入ります。

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

経営学修士、中小企業診断士、岡山県立大学地域創造戦略センター客員教授
神戸大学大学院 経営学研究科 博士後期課程中退(経営学修士、MBA)。日本屈指の高収益企業、キーエンスの新商品・新規事業企画担当を歴任。退職後、新規事業や新製品開発、ビジネスの付加価値向上などの分野において、大企業から、中小企業まで幅広い業種・企業の指導に携わる。一般消費者向けの小売店、ネット販売企業などにおいても、ビジネスモデルの転換、収益力向上、新製品開発などで数多くの実績がある。
最近では、次世代自動車(CASE)、次世代通信、ロボット、AI、IoT、VR・AR、農業クラウドサービスなど、さまざまな最先端・成長業界における新規参入の支援を、上場企業をはじめ全国の企業に行っている。こういった企業への指導実績から、テクノロジーについても非常に詳しく、最先端分野の知見を有している。専門分野は、ブルーオーシャン戦略、事業戦略、技術経営(MOT)、Webマーケティング。
コンセプトエナジー株式会社

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