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片山修「ずだぶくろ経営論」

徹底した技術者優遇と海外展開…40人でも世界トップシェア、あの中小企業の秘密

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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徹底した技術者優遇と海外展開…40人でも世界トップシェア、あの中小企業の秘密の画像1ナプソン社長の中村真氏

 東京都江東区の下町に本社を構えるナプソンは、従業員数約40人という小規模ながら、半導体などの測定器分野において世界で高く評価されている。

「わが社の製品は、シート抵抗測定器とか、抵抗率測定器といわれるもので、世間にはあまりなじみがありませんね。でも、半導体には必ず必要な測定器なんです」

 そう説明するのは、ナプソン社長の中村真氏だ。半導体は巨大マーケットだが、その測定器業界は世界全体でも50億円には届かないレベルで、ニッチなマーケットだ。そのニッチマーケットでオンリーワンの技術を誇るのがナプソンだ。

 ナプソンが扱う測定器類は、半導体デバイス、太陽電池、液晶パネルや有機ELなどのフラットパネル、タッチパネル、導電性フィルム、さらにグラフェンや銀ナノワイヤーなどの新素材や、リチウムイオン電池の正極材、負極材、セパレーターなどの検査に欠かせず、じつに対象範囲が広い。つまり、IT社会にはなくてはならない存在といえる。

 その用途は、大きく分けて2つある。
 
 一つは、物質や材料の研究開発だ。例えば、新素材の開発にあたって、その素材の電気抵抗を評価する際に使われる。素材の使用環境や形状の変化によって電気抵抗に変化があるかどうかを測定するなど、出番は多い。

 この種の抵抗率測定器は、用途によって接触式と非接触式に分けられる。

「接触式は『四探針法』といって、サンプルに針を接触させて電気を流して抵抗率を測る測定器です。針の形状や、針をあてる圧力などによって、何十種類もあります。メリットとしては、測定範囲が広く、絶対値の測定が可能です。ただ、針をあてますから、サンプルになんらかの跡が残ってしまうんですね」(中村氏)

 非接触式測定器は、針をあてずに抵抗率を測定する。磁石にコイルを巻いた装置によって渦電流を発生させる技術を測定器に応用したもので、ほかの用途にも使われている。サンプルに針をあてないので、サンプルにダメージを与えないのが特徴だ。ただ、絶対値を測るものではなく、四探針法測定のデータなどをもとに校正したデータを使用する。また、測定のレンジが限定されるというデメリットが存在する。

「接触式のメーカーは、国内3社、世界7社ほどあります。非接触式は、国内ではわが社だけ、世界でもアメリカ1社、ヨーロッパ3社あるだけ。接触式と非接触式の両方式の測定器を、本格的に開発、製造、販売する企業は、世界中でわが社だけです」(中村氏)

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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