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田中圭太郎「現場からの視点」

河合塾、講師を一斉雇い止め…労働局が指導「社会通念上、疑問」、無期雇用転換を阻止か

文=田中圭太郎/ジャーナリスト
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 大手予備校の河合塾が今年3月、29年働いた講師を雇い止めしたことに対し、福岡労働局が「助言」というかたちで指導したことが明らかになった。雇い止めの理由は「授業アンケート結果が改善されなかった」との内容だったが、労働局はその理由と雇い止め自体について、疑問を投げかけたかたちだ。

 改正労働契約法によって、5年以上同じ職場で勤務する有期雇用労働者は、無期雇用への転換を申し入れることができるようになった。河合塾側が無期雇用を阻止しようとしたことが、雇い止めの背景にあるのではないかという指摘もある。

 河合塾で何が起きているのか。雇い止めされた当事者に聞いた。

例年よりも大量の雇い止め

 河合塾で29年間勤務し、主に九州地区の福岡校、北九州校で講師をしてきた松永義郎さん(68)が、2018年3月での雇い止めを口頭で告げられたのは、17年11月だった。

河合塾、講師を一斉雇い止め…労働局が指導「社会通念上、疑問」、無期雇用転換を阻止かの画像110月26日厚生労働省で会見する松永義郎さん

 理由は「授業アンケート結果が改善されなかった」というもの。しかし、講師がどのような部分で評価されるかについて基準も結果も聞かされていないうえ、具体的に改善を指導されたこともない。河合塾の講師には当時、定年などの決まりもなかった。身に覚えがない理由による、一方的な雇い止めだった。

「あと2、3年は働けると思っていましたので、ショックでした。冬期講習を控えた時期で、受験生にとっても大事な時期でしたから、モチベーションが上がらないなかでもいい授業をしなければならなかったのが、辛かったですね」

 なんとか受験の指導を終えた松永さんは、自分の雇い止めにどうしても納得がいかなかった。すると、河合塾の全国の講師が、例年よりも多く雇い止めされていることを知った。これまでは年に3、4人が辞めるだけだったのに、16年3月と17年3月は十数人が雇い止めされているという。

 この時期、有期雇用の労働者を、企業や大学が雇い止めすることが問題になっていた。13年に改正された労働契約法によって、5年以上同じ事業所で勤務している有期契約の労働者は、本人が希望すれば、無期雇用への転換を申し込めるようになった。にもかかわらず、無期雇用への転換を嫌がった雇用者側が、長く勤務している人を雇い止めしていた。

 河合塾も、無期転換を阻止しようとして、雇い止めをしているのではないか――、そう疑問を持った松永さんは、18年3月、福岡労働局に相談した。

田中圭太郎/ジャーナリスト

田中圭太郎/ジャーナリスト

ジャーナリスト、ライター。1973年生まれ。大分県出身、東京都在住。97年、早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年からフリーランスとして独立。警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピック、大相撲など幅広いテーマで執筆。著書に『ルポ 大学崩壊』(ちくま新書・2023年2月9日発売)、『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)。メールアドレスは keitarotanaka3000-news@yahoo co.jp、 HPはジャーナリスト 田中圭太郎のWEBサイト

Twitter:@k_taro_tanaka

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