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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

利用者は成田空港の3倍…ドバイ空港「年9千万人利用」とエミレーツが世界シェア急拡大の理由

文=篠崎靖男/指揮者

ドバイの圧倒的な景観

 しかしながら、国際乗降客数第1位の座に君臨していたヒースロー空港を2014年に抜き去ったのは、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ国際空港でした。ドバイ空港は現在もなお急成長を続けており、まだ日本の航空会社は所有していないエアバス製の2階建て飛行機「A380」だけのためにつくられた新ターミナルに、当地のエミレーツ航空の機材が端から端まで並んでいる光景は、壮観としか言いようがありません。ちょうど現在、僕は南アフリカで客演指揮をしておりますが、今回も移動に利用したエミレーツ航空のドバイ-ヨハネスブルク間も、2階建て飛行機でした。ちなみに、成田国際空港-ドバイ間は2階建て飛行機が就航しています。
 
 現在、ドバイ空港は、国際旅客数が年間約9000万人に上ります。たとえば、成田空港の3100万人と、羽田空港の1700万人の両方を足しても、ほとんど倍に近い数字です。そんなドバイ空港を大成功に導いたのは、当時では、とても斬新なアイデアでした。それは、ドバイを最終目的地とせずに、乗り換え客をメインターゲットとした戦略です。

 もちろん、都市としてのドバイ市も近代化に成功し、欧米のビジネス業界の注目を浴び、観光都市としても人気が出始めています。しかしながら、それでもドバイで降りる乗客のみを相手にしていては、ビジネス的に限界があります。そんなとき、航空機燃料の高騰により大打撃を受けていた欧米系の航空会社を尻目に、石油産出国の強みを生かし、ビジネスの分野でも天賦の才能を持ったシェイク・モハメッド(現在、ドバイ首長)により、ドバイ空港の大開発と、それに伴ったエミレーツ航空のビジネスの拡大という、壮大な計画が推し進められました。

 2013年には、エアバスA380を50機、ボーイング777を150機、合計990億ドル(約10兆円)という、国家予算並みの金額にもなる航空史上最大級の航空機発注を行ったというニュースは、航空業界のみならず世界中をあっと言わせました。

 以前は、アラブ系の航空会社は「南回り」と呼ばれていて、「安かろう、長かろう」の代名詞でした。しかしながら、燃料コスト面で優位なことで料金を低くできただけでなく、むしろ、欧州、アジア、アフリカの中間にある地理を優位性として、世界シェアの拡大を目指したわけです。そして、画期的なのは、ドバイで乗り換えれば、世界の多くの都市に直接飛べる路線を大幅に充実させました。たとえば、日本から直行便がないロシアのサンクトペテルブルク、ドイツのベルリン、イタリアの観光都市ヴェニスや、ノルウェーの中都市でしかないベルゲンまで、ドバイから飛ぶことができるのです。ブラジル在住の僕の友人などは、日本からブラジルのリオデジャネイロに帰るのにも、航空券が安いという理由から、エミレーツを使っています。

 現在、同じく産油国のカタールや、イスラム教国でありながら、EU参加を目指し近代化を進めているトルコも同じ戦略で、急成長を遂げています。低価格だけでなく、航路を増やすことにより、目的地までの総所要時間を減らす。かつ、機内でのサービスも充実させ、乗客が長時間のフライトであっても、楽しく過ごすことができる環境を整えることによって、乗客の経済的負担、時間的負担、精神的負担の3本柱を同時に減らしながら、急成長しているのです。

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