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ファナック、中国での受注半減で露呈…中国経済、想定以上の悪化が進行

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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今後の同社の柱となるヒット商品不在

 
 10月29日、ファナックは通期予想を下方修正した。中国の需要が落ち込むなか、同社は新しい収益源を獲得しなければならない局面を迎えたといえる。既存の事業構造を基にすると、スマートファクトリー(ビッグデータを用いて自律的に稼働する工場)関連の事業を強化することは収益獲得に資するだろう。

 問題は、その取り組みをファナックだけで実現できるか否かだ。端的にいえば、ファナックの業績拡大に貢献したのはスマートフォンの登場だろう。それが、“中国製造2025”をはじめとする世界的なIoTへの取り組みを加速させ、制御機器やロボットへの需要を高めた。その変化は、ファナックの外部からもたらされたものだ。ファナックが成長できたのは、自社の強みを伸ばし、外部環境の変化に適応できたからである。

 これまで設備投資をけん引したスマートフォンは出荷台数が伸び悩んでいる。それは、ヒット商品が見当たらなくなったことを意味する。多くの人々がアップルのiPhoneを買い求めたのは、アップルにしか実現できなかったデザインや機能があったからだ。だから、価格が高くとも多くの人がiPhoneを手に入れた。それがEMS企業の設備投資増加とファナックの製品への需要を支えた。

 足許、中国を中心にこれまでとは逆の動きが進みつつある。設備投資は抑制され、新しく高機能の生産機器への需要は減少している。世界的に新しい生産設備を必要とする革新的なモノ=最終製品が生み出される展開は想定しづらい。
 それに伴い、ファナックをはじめ国内の生産機器関連企業の収益は減少するだろう。この変化に対応するには、わが国の企業が対企業向けの製品やサービスの強化に加え、新しい最終製品=ヒット商品を生み出し、需要を創造していくことが重要だ。

 需要の高まりが見込みづらいなか、ファナックが自力で業績の安定を目指すことは口で言うほど容易なことではない。国内企業の多くが中国や米国の需要に支えられて業績を拡大し、それが国内の景気を支えてきた。ファナックの業績見通しの悪化は、外部要因に依存してきたわが国経済の下方リスクが上昇しつつあることと考えるべきだ。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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