東芝は最大1兆円の損失といわれた負の遺産、米国テキサス州の液化天然ガス(LNG)プロジェクト、フリーポートを中国の民間ガス大手、ENNグループ(新奥集団)に売却することで合意した。一時金をENNに支払い、米国子会社の株式を譲渡する。930億円の出血で抑えられたと東芝は説明したが、これで一件落着とはいきそうにはない。

 対米外国投資委員会(CFIUS)の承認が必要だからだ。米中貿易戦争の真っただ中にあって、CFIUSが中国企業への売却を認める可能性は極めて低い。

 なぜなら、LIXILグループがイタリアの建材子会社を中国企業に売却しようとしたところ、CFIUSが承認しなかった例があるからだ。ましてや、フリーポートは米国での事業だ。CFIUSが承認する可能性は低い。そうなると、東芝は1兆円の損失が見込まれる事業を抱え続けることになる。

 外国人株主比率は72.32%(18年3月期末)に上り、圧倒的なパワーを持つ。東芝経営陣は戦々恐々だ。今後も物言う株主に翻弄されることになるとみられる。そのため「車谷会長では、物言う株主に対処できない」(東芝の元役員)として、社内で交代論が浮上しているという。

鴻海精密工業がシャープを手放す?

 シャープは、三重県・亀山工場で製造していた米アップルのiPhone用センサー部品を、親会社である鴻海精密工業(ホンハイ)の中国拠点に移した。これが3000人規模の期間工の雇い止めという社会問題を引き起こすことになった。

 かつて亀山工場でつくった液晶テレビは、「世界の亀山ブランド」として一時代を築いた。 2016年、ホンハイ傘下入り後、減少が続いていた売り上げの反転を目指して、スマートフォン向けのカメラ部品やセンサー部品といった電子デバイスに注力した。

 亀山工場では18年夏までに3000人以上減らした。この労働者は、国内で就業資格を持つ外国人で、日系人が大半を占めていた。

 外国人材受け入れ議論が国会で進むなかで、亀山工場での外国人従業員の大量の雇い止めが発覚。期間工が調整弁として使われていた実態を改めて見せつけた。

 ここにきて、「ホンハイがシャープを売却するのではないか」との観測が高まりつつある。

 ホンハイはパソコン、スマートフォン、ゲーム機などをEMS(受託生産)する世界最大のメーカーで、アップルを中心に世界に多数の顧客を持っている。顧客企業がシャープとライバルとなるケースも少なくない。ホンハイは顧客となるメーカーの数を増やし、受託製品の幅を広げたい。中国の有力企業にシャープを売却するのがベストという読みだ。

 一時期、中国ハイセンス・グループ(海信集団)を最有力候補と取り沙汰されていた。だが、米中貿易戦争の激化を受けてシナリオ通りにはいかなくなった。シャープが台湾から中国企業に転売され、再度“漂流”することになるのだろうか。
(文=編集部)

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