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白井美由里「消費者行動のインサイト」

テレビCMによる中断、番組をより楽しいと感じさせる効果…中断が消費者行動に与える影響

文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

 リュウの行った実験は、ハイキングの行き先として、被験者に公園A(滝や小川があり景色は素晴らしいが、家から70マイルも離れたところにあり駐車スペースも狭い公園)と公園B(大きな岩や茂みが多く景色は劣るものの、家から40マイルのところにあり駐車スペースも広い公園)のどちらかを被験者に選択してもらうというものです。公園Aは「望ましさは高いけれども実現可能性が低い」選択肢、公園Bは「実現可能性は高いけれども望ましさが低い」選択肢です。このとき、中断される条件に割り当てられた被験者は、どちらの公園を選択するかを考えているときに中断を求められ、無関係の別の作業をしてもらった後に、公園の選択を再開してもらいました。

 分析の結果、中断が入ったほうが入らなかった場合と比べて、望ましさの高い公園Aを選択した被験者が多くなりました。リュウはこの結果について、最初は選択肢に関する具体的なデータに焦点を当てて検討するものの、意識を逸らした後(中断後)に再開すると、データはすでに理解していることから、主目標である望ましさ(=景色の素晴らしさ)を志向するようになると説明しています。

 リュウはほかにも実験を行い、中断を経験した場合、高品質高価格の商品と低品質低価格の商品の選択では前者を、ハイリスクハイリターン商品とローリスクローリターン商品の選択では前者を選択する被験者が多くなることを確認しています。つまり、中断後に再開した意思決定では、価格よりも品質、リスクよりもリターンと、望ましい特性を重視する傾向が強まるのです。

テレビCMは、番組の楽しさを維持できる

 ポジティブな経験をしていると楽しく感じますが、通常、そうした楽しさは時間の経過とともに低下していきます。ネルソンらはテレビ番組も同様で、どんなに楽しく見ていた番組でも、その楽しさは終了までに低下していくと考えました【註4】。ただし、ネルソンらが考えた仮説は、CMが入ることによってその低下が抑制されるというもので、CMによる中断のポジティブな効果です。

 彼らが行った実験は、『Taxi』というコメディ番組のエピソードの一つを見てもらい、終了後に評価してもらうというものです。被験者には、CMが含まれる動画とCMが削除された動画のどちらかを見てもらいました。その結果、CMを含む動画を見た被験者のほうが番組を楽しんだという評価が高くなったことが明らかにされました。

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

学部
カリフォルニア大学サンタクルーズ校 1987年卒業
大学院
明治大学大学院経営学研究科
1993年 経営学修士
東京大学大学院経済学研究科
1998年 単位取得退学
2004年 博士(経済学)
慶応義塾大学 教員紹介 白井美由里 教授

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